渥美町

渥美町：渥美半島の自然と歴史が息づく場所

渥美町（あつみちょう）は、かつて愛知県の最南端、渥美半島の先端に位置していました。三河湾と太平洋に面し、温暖な気候と豊かな自然に恵まれたこの町は、2005年10月1日に田原市へ編入されました。

地理：海と砂丘、多様な地形

渥美半島は、北に三河湾、南に太平洋を望み、伊良湖水道を挟んで志摩半島と相対しています。渥美町の地形は、低山部・丘陵部と平坦部に大きく分けられます。赤石山系の南端が町の中央部を貫き、300m級の山々を形成。その周辺には平地が広がり、特に北西部には広大な平坦地が広がっています。

太平洋側には、日出の石門から静岡県の潮見坂まで続く「片浜十三里」と呼ばれる砂浜が広がっています。また、伊良湖岬から三河湾側には西山砂丘が、福江湾には砂州が発達し、独特の景観を作り出しています。

歴史：古代から現代まで

渥美町の歴史は古く、縄文時代の貝塚からは人骨が出土しています。平安時代末期から鎌倉時代にかけては、伊良湖東大寺瓦窯跡が設けられ、伊勢神宮領となるなど、対岸との交流も盛んでした。江戸時代には、田原藩の領地や天領、寺領などが混在していました。

昭和中期までは漁業が中心でしたが、豊川用水の完成と土壌改良により、全国有数の近郊農業地帯へと発展を遂げました。1971年には中部電力の火力発電所が稼働し、町の財政を潤しましたが、後に設備の老朽化により縮小。財政難と観光客の減少から、田原町、赤羽根町との合併協議が行われましたが、新市名の意見対立から協議は決裂しました。

その後、早期合併推進派の町長が当選し、2004年には田原市への編入合併の是非を問う住民投票が行われ、賛成多数で田原市への合併が決定。2005年10月1日、渥美町は田原市に編入され、その歴史に幕を閉じました。

産業：農業、漁業、観光

渥美町は、農業、漁業、観光業が盛んな町でした。農業では、野菜、果物、花の栽培が盛んで、特に電照菊は渥美半島の冬の風物詩となっていました。漁業では、ノリの養殖やアサリが有名でしたが、近年は衰退傾向にあります。

観光業にも力を入れており、島崎藤村の詩「椰子の実」に歌われた伊良湖岬や恋路ヶ浜などの美しい風景が観光客を魅了してきました。しかし、晩年は観光客の減少に悩まされ、伊良湖フラワーパークも閉園しました。

交通：フェリーターミナルとしての役割

渥美町には鉄道は通っていませんでしたが、豊橋鉄道のバスが運行していました。国道42号と国道259号が町内を走り、伊良湖岬には「道の駅伊良湖クリスタルポルト」があり、鳥羽市や知多半島、離島を結ぶフェリーターミナルとして機能していました。

名所・旧跡：自然と歴史の宝庫

渥美町には、伊良湖岬、恋路ヶ浜、日出の石門などの自然豊かな名所や、伊良湖東大寺瓦窯跡などの歴史的な旧跡が多く存在します。また、伊勢神宮との繋がりを示す御衣祭は、今もなお賑わいを見せています。

渥美町は、田原市に編入された後も、その美しい自然と歴史、文化を大切に守り続けています。渥美半島を訪れる際には、ぜひ渥美町の魅力を感じてみてください。

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