湊谷弘

湊谷弘：不屈の柔道家、世界を制覇し後進を育む

湊谷弘（みなとや ひろし、1943年10月17日 - 2016年6月15日）は、富山県出身の柔道家であり、講道館9段という段位を有していました。彼は、1967年と1969年の世界柔道選手権大会軽中量級で優勝したことで、その名を広く知られています。

生い立ちと柔道との出会い

富山県福野町（現在の南砺市）で、接骨院を営む家庭の末っ子として生まれた湊谷弘。父親が道場を経営していた影響で、5歳という幼い頃から柔道を始めました。当時からインターハイや国体への出場を目標に、日々の稽古に励んでいました。兄弟もスポーツに打ち込み、中には卓球のダブルスで日本一になった者もいます。

進学校である県立福野高校に進学した湊谷は、柔道部で鍛錬を積みました。当時は体重無差別の時代であり、体重60kgの湊谷は体格で勝る相手との対戦が常でした。高校時代の全国大会出場は叶いませんでしたが、「もっと強くなりたい」という強い思いを抱き続けました。

天理大学での飛躍

大学からの勧誘がない中、近所の人物の推薦で天理大学を受験し合格。しかし、大学では実力不足から最低ランクに分類され、厳しい練習に耐える日々を送りました。体格で劣る湊谷は、人一倍の努力を重ね、筋力トレーニングや走り込み、1人打ち込みに励みました。その結果、2年生の夏には見違えるほど筋肉質な体を手に入れ、メキメキと実力をつけていきました。

天理大学での活躍は目覚ましく、全日本学生選手権大会（軽量級）で3位入賞を果たし、学生団体戦のレギュラーにも選ばれました。1964年には全日本学生東西対抗大会で優秀選手賞を受賞するなど、東京五輪の候補選手にも選ばれています。1965年の世界選手権大会代表選考会では、東京五輪覇者の中谷雄英を破り、代表の座を掴み取りました。世界選手権では決勝で敗れたものの銀メダルを獲得し、その名を世界に轟かせました。

世界選手権制覇とオリンピックへの夢

大学卒業後、湊谷はオランダに渡り、アントン・ヘーシンクの道場で指導員を務めながら、自身の柔道も磨きました。1967年の世界選手権大会では、圧倒的な強さで優勝を果たし、世界チャンピオンの座に輝きました。しかし、1968年のメキシコ五輪では柔道競技が実施されず、湊谷のオリンピック出場の夢は叶いませんでした。

その後も、1969年の世界選手権大会で2連覇を達成するなど、国内外で活躍を続けました。1972年のミュンヘン五輪を目指しましたが、年齢的な衰えには勝てず、第一線から退くこととなりました。しかし、その後もサンボの大会で優勝したり、全日本選手権大会に出場し選手宣誓を務めるなど、柔道への情熱を持ち続けました。

指導者としての貢献

現役引退後、湊谷は金沢工業大学で助手・柔道部監督を務め、指導者としての才能を開花させました。同大柔道部を13年連続で北信越ブロック優勝に導き、多くの優秀な選手を育成しました。また、全日本柔道連盟評議員や全日本学生柔道連盟理事などを務め、柔道界の発展に尽力しました。2004年からは、自身の名を冠した「湊谷杯全国学生柔道体重別選手権」も主催し、後進の育成に力を注ぎました。

2016年6月15日、湊谷弘は心不全のため72歳で亡くなりました。彼の柔道に対する情熱と、指導者としての多大な貢献は、多くの人々の心に深く刻まれています。

主な戦績

1963年 - 全日本学生柔道選手権大会（軽量級） 3位
1965年 - 世界柔道選手権大会（軽量級） 準優勝
1966年 - 全日本学生柔道選手権大会 優勝
1968年 - 全日本学生柔道選手権大会 優勝
1967年 - 世界柔道選手権大会（軽中量級） 優勝
1969年 - 世界柔道選手権大会（軽中量級） 優勝
1969年 - 全日本柔道選手権大会 出場
1969年 - 全日本選抜柔道体重別選手権大会（軽軽量級） 優勝
1970年 - 全日本柔道選手権大会 出場
1970年 - 全日本選抜柔道体重別選手権大会（軽軽量級） 優勝
* 1971年 - 世界柔道選手権大会（軽中量級） 準優勝

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