湘南海岸・砂浜のみち

湘南海岸・砂浜のみち（しょうなんかいがん すなはまのみち）は、神奈川県の藤沢市から茅ヶ崎市にかけて広がる湘南海岸線に沿って設けられた、自転車と歩行者のための専用道路です。このルートは、自然に親しむための広域歩道である「関東ふれあいの道」（首都圏自然歩道）の一部も担っています。

この道の主要な部分は、藤沢市の鵠沼海岸から茅ヶ崎市の柳島海岸までの約8キロメートル区間に及び、「湘南海岸のサイクリング道路」や「湘南海岸サイクリングロード」とも呼ばれています。東端にあたる湘南海岸公園内は、「海岸通路」として整備された遊歩道が含まれています。

このサイクリング道路は、1968年（昭和43年）に、国道134号の脇に設けられる自転車歩行者専用道として建設が始まりました。起点は藤沢市鵠沼海岸四丁目の引地川河口付近、終点は茅ヶ崎市柳島で、砂浜のすぐ内側にある砂防林に沿う形で整備されました。全長はおよそ8キロメートル、幅員は基本的に4メートルで、路面は全線アスファルト舗装が施されています。環境保全の観点から、この区間には照明設備は設けられていません。利用者の安全を確保しつつ景観に配慮するため、車止めには烏帽子岩を模した石造りのものや、ウィンドサーフィンの帆をかたどった金属製のものなど、地域に根差したデザインが採用されています。

地形的な起伏はほとんどなく、大部分が直線で構成されています。利用者は、江の島や沖合に浮かぶ烏帽子岩といった相模湾の象徴的な風景を眺めながら、快適に散歩やジョギング、サイクリングを楽しむことができます。ただし、砂浜に非常に近い位置にあるため、悪天候時には強い風を受けたり、高波の影響を受けたりすることがあります。特に風によって路面に砂が吹き付けられやすいため、自転車で通行する際にはスリップしないよう注意が必要です。

藤沢側の起点に近い鵠沼海岸四丁目には地下道があり、ここから国道134号松波交差点の地下を抜ける「湘南 海のちか道」へと繋がっています。この地下通路は、神奈川県道451号藤沢大和自転車道線の起点ともなっており、この自転車道は将来的には三多摩地区方面からのアクセスを可能にし、さらに広域な関東地方西部を縦断する大規模自転車道のネットワークの一部となる構想があります。一方、「湘南海岸のサイクリング道路」自体は、太平洋岸自転車道構想の一部を形成すべき重要なルートと位置づけられていますが、神奈川県内では西湘バイパスの無料区間沿いを除き、他の関連区間の整備は現状あまり進んでいない状況です。

沿線には、レジャーや自然を満喫できる様々な施設や見所が点在しています。

新江ノ島水族館
日本有数の規模を誇る片瀬西浜・鵠沼海水浴場
サーフビレッジ内に展示室がある県立湘南海岸公園
ビーチバレージャパンの会場となる湘南鵠沼海岸常設コート
かつての鵠沼プールガーデン跡に整備された鵠沼海浜公園（鵠沼スケートパーク含む）
『浜辺の歌』ゆかりの地を示す記念ボード
砂防林沿いに整備された休憩施設や散策路を含む「しおさいの森」（辻堂、茅ヶ崎、柳島）
ジャンボプールや交通公園が人気の県立辻堂海浜公園
「なぎさギャラリー」や「海浜自然生態園」が見学できる神奈川県藤沢土木事務所汐見台庁舎
相模湾のシンボル、烏帽子岩
人気の海水浴場、サザンビーチちがさき
柳島青少年キャンプ場

また、この美しい海岸風景は多くの作品の舞台にもなっています。特に、林古渓作詞・成田為三作曲の唱歌『浜辺の歌』は、藤沢市辻堂東海岸が誕生地とされており、自転車道沿いにはその記念ボードが設置されています。2009年公開の映像作品『海の上の君は、いつも笑顔。』も、この地が舞台となっています。

歴史的には、かつて自転車道の起点は引地川の左岸側にあり、無料貸し自転車のサービスも行われていました。1969年には引地川に自転車専用の「みどり橋」が架けられましたが、1990年の台風で隣接する鵠沼橋と共に落橋し、鵠沼橋は復旧・拡幅された一方、みどり橋は再建されませんでした。さらに、この道路は市民マラソンのコースとしても活用されており、1977年に第1回湘南マラソン大会が開催された後、同年10月からは「月例湘南なぎさマラソン」として現在も毎月開催されています。

「湘南海岸・砂浜のみち」は、単なる交通路としてだけでなく、地域住民や観光客にとって、海辺の自然を満喫し、多様なレクリエーションを楽しむための貴重な空間として親しまれています。

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