湘南電車

湘南電車の概要

湘南電車（しょうなんでんしゃ）は、日本国有鉄道（国鉄）の東海道本線で運行される電車の愛称です。1950年に初めて運行を開始した80系電車からその名が付けられて以来、東京と熱海・沼津を結ぶ中距離電車の通称として広まっています。80系電車はオレンジと緑のツートンカラーの「湘南色」で知られ、多様な形式においてこの愛称が用いられています。

歴史と由来

湘南電車の名前の由来は、国鉄部内で呼ばれていた「湘南列車」にさかのぼります。1950年3月に、この列車が電車に切り替わる際に「湘南電車」という名称が一般に広まりました。特に、オレンジと緑の色彩がこの呼称に強く影響を与えたと考えられています。しかし、小田原以西の地域では「湘南伊豆電車」という名称が使われ、地域ごとに異なる呼称が存在しました。

電車化が進む中、新たに開発された80系電車が登場し、これに湘南電車の名が冠されるようになりました。80系は、高速性能に優れ、長距離運転が可能な設計がなされており、国鉄における長距離電車運転の先駆けとなりました。最初は「遭難電車」と揶揄されることもありましたが、やがて安定した運用が確立され、長距離列車運行の常識を変える存在となったのです。

次第に80系は他の形式にも影響を与え、「湘南形電車」として多くの新型や改造車が登場しました。111系や113系による湘南電車の置き換えが進む中でも、「湘南電車」の名はしっかりと残され、以後もその名が使われ続けました。

湘南色の誕生

湘南色は、80系電車によって1960年代から普及したオレンジと緑のツートンカラーです。このカラーパターンの起源は、グレート・ノーザン鉄道の車両デザインを参考にしたと言われ、明るいオレンジが目を引く色彩として選ばれました。最初の試作では、色見本を小さくして決定されたため、当初は柿色に近い色合いだったという経緯もあります。特に、地域特産の果物に由来した色合いが印象づけられ、「かぼちゃ電車」「みかん電車」とも呼ばれることがあります。

この湘南色は、近郊型や急行型電車に広く使用され、国鉄時代には全国的に浸透しました。具体的には、80系に続く多くの系列が湘南色に塗装され、特に111系や113系などの近郊型電車が有名です。国鉄の冷戦時代には、長距離と通勤を支える存在として、その色彩の効果もあいまって印象を強めました。

近年の動向

国鉄分割民営化後、湘南電車の愛称や湘南色への注目は次第に薄れていきましたが、いくつかの運行系統では依然として湘南色の帯を持つ車両が存在しています。また、湘南色に復刻された電車も一部存在しており、その伝統を受け継いでいます。特にしなの鉄道や天竜浜名湖鉄道などでは、湘南色の車両が登場し地域のファンに親しまれています。

今でも湘南電車の名前は、多くの鉄道ファンや地域住民の間で愛され続け、文化的な象徴となっています。湘南色は国鉄時代の名残としても、後世に色濃く影響を与え、鉄道の風景に深く染み込んでいるのです。

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