湧玉池

湧玉池：富士山の恵みが生んだ聖なる湧水

静岡県富士宮市、富士山本宮浅間大社の境内に位置する湧玉池は、古くから人々に愛されてきた神聖な湧泉です。国の特別天然記念物であり、「平成の名水百選」にも選ばれています。その美しさと、富士山の伏流水を水源とする豊かな湧水は、訪れる人々を魅了し続けています。

概要

湧玉池は、昭和19年（1944年）に国の天然記念物に指定され、その後昭和27年（1952年）には特別天然記念物となりました。この池の最大の特徴は、富士山の雪解け水などが地下を通り湧き出した伏流水を水源としていることです。年間を通して約30万トンもの水が湧き出ており、水温は常に13℃前後で安定しています。この豊富な湧水は、一級河川である神田川の源流ともなっています。

湧玉池の北側には、水源を守るように末社の水屋神社が鎮座しています。また、池の周辺には厳島神社や稲荷神社も祀られており、この地が古くから神聖な場所として大切にされてきたことがわかります。水汲み場も設けられ、訪れる人々は湧水を直接手にすることができます。

歴史

古く、湧玉池は上池と下池に分かれており、上池のみが湧玉池と呼ばれていました。下池から下流は「御手洗川」と呼ばれ、多くの歌人に詠まれてきました。和歌には「御手洗川」と詠まれたものも多く残されています。また、飛鳥井雅有の『春の深山路』には、湧玉池の水が潤井川に合流していることが記されています。

湧玉池は、古来より富士登拝者の禊の場として重要な役割を果たしてきました。富士参詣曼荼羅図にも、湧玉池で禊を行う道者の様子が描かれています。これらの図は、富士山信仰における湧玉池の重要性を示しています。

慶長13年（1608年）の史料『寺辺明鏡集』には、当時の登拝者が湧玉池で垢離をとる風習があったことが記されています。これは、湧玉池が単なる水源ではなく、人々の信仰と生活に深く結びついていたことを示しています。

環境保全

湧玉池は、近年、外来種の藻の大量発生により、土着のバイカモなどの生育が危機に瀕しています。そのため、定期的な外来種除去や清掃活動が不可欠となっています。長年にわたりこれらの活動を続けてきた浅間大社青年会は、環境省から「水・土壌環境保全功労者表彰」を受けています。

また、湧玉池と神田川が「平成の名水百選」に選定されたことをきっかけに、富士宮市では毎年6月上旬に「湧玉池・神田川一斉清掃」を実施しています。この活動には、浅間大社青年会をはじめとする多くのボランティアが参加し、環境美化と自然保護に貢献しています。

所在地・アクセス

湧玉池は、富士山本宮浅間大社の境内にあります。

電車: JR東海富士宮駅から徒歩約10分
車: 東名高速道路富士ICから西富士道路、県道76号経由

まとめ

湧玉池は、富士山の恵みと人々の信仰が織りなす、まさに聖なる湧水です。その美しい景観と豊かな湧水は、訪れる人々に癒しと感動を与えます。しかし、外来種問題など、環境保全の課題も抱えています。この貴重な自然を守り、次世代へと受け継いでいくために、私たち一人ひとりが意識を高めていく必要がありそうです。

もう一度検索