湯の沢温泉 (北秋田市)

湯の沢温泉

湯の沢温泉は、秋田県北秋田市にある歴史ある温泉地です。地元では、経営者の苗字から杣温泉、または地名から小又温泉とも呼ばれています。かつては杣温泉旅館と森吉山荘の2軒の温泉宿がありましたが、森吉山荘は2022年7月から営業を休止しており、再開後も温泉や食事の提供は予定されていません。

泉質と効能

湯の沢温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉です。以下のような効能があるとされています。

浴用
きりきず
虚弱体質
皮膚病
やけど
婦人病
動脈硬化症
痛風
糖尿病
筋肉痛
五十肩
関節痛
飲用
消化器病
糖尿病
痛風
胆石
便秘
肥満症

禁忌症
浴用
急性疾患
活動性結核
悪性腫瘍
重い心臓病
飲用
肝臓病
高血圧
むくみ

温泉成分

温泉水1kg中に以下の成分が含まれています（平成10年4月14日分析）。

ナトリウムイオン: 290.2mg
カルシウムイオン: 130.1mg
塩素イオン: 449.4mg
硫酸イオン: 310.2mg
炭酸水素イオン: 12.0mg

歴史

湯の沢温泉の歴史は古く、江戸時代の貞享元年（1684年）に久保田藩が南部藩との境界警護のために集落を形成したことに始まります。享保2年（1717年）には、宮野四郎兵衛が境目巡視の際に温泉を発見したと伝えられています。地元古老の話では、古くから温泉の存在は知られていたものの、深山に位置するため場所が特定されていませんでした。実際に温泉に入浴したところ病が治ったことから、温泉地としての開発が進められました。大正3年（1914年）には杣氏の個人所有となり、現在に至ります。

杣家は元々相馬氏を名乗っていましたが、戸籍法実施の際に役場担当者が誤って漢字を記載したとされています。江戸時代の古文献には相馬と記載されており、2人扶持を与えられていたことからもそのことが伺えます。

終戦直後には、東京電気化学株式会社の東北前田炭鉱や奥羽無煙炭鉱が近くにあり、映画館や郵便局、商店などが立ち並び賑わいを見せていました。現在、その面影を残す記念碑が建てられています。また、湯の岱小中学校は最盛期には350人もの児童生徒が在籍していました。

菅江真澄は、湯の沢温泉を「ぬるま湯」と記録しており、明治時代でも35℃程度の湯温でした。しかし、昭和50年頃に山陰での電化工事の発破作業を行ったところ、急に温度が上昇しました。また、菅江真澄や明治時代の記録では硫黄臭が強かったとされていますが、現在ではそれほど強くありません。

2011年3月の東日本大震災では、約2ヶ月半に渡り湧出量が減少し、湯温が30℃程度まで低下しましたが、その後ポンプを使用して湧出量を回復し、湯温も52～53℃まで戻りました。

菅江真澄の記録

菅江真澄は、1802年（享和2年）に『雪の秋田寝』で、森吉山登山後に白糸の滝を見ようと湯の岱を訪れた際の様子を記録しています。当時、湯の岱には2、3軒の家があったと記されています。また、1803年（享和3年）には『秀酒企乃溫濤』で、砂子沢峠を越えて再び白糸の滝を訪れ、滝の様子や機織淵の伝説を記録しています。その後、湯の沢温泉に到着し、20軒ほどの湯の館があったと記しています。真澄は、湯の沢温泉の湯温が低く、宿泊する人は稀であると記しています。

森吉山荘

奥森吉には国民宿舎森吉山荘がありましたが、2022年4月から休止となっています。2026年7月の一部再開を目指していますが、本館の営業のみとなり、温泉や食事の提供は行われない予定です。

周辺情報

湯の岱小中学校跡
東北前田炭鉱記念碑
白糸の滝

アクセス

秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線 阿仁前田温泉駅より自動車で約20分
阿仁前田温泉駅より、杣温泉まで予約制の乗合タクシーが通年運行

参考文献

* 『湯の沢温泉案内』、金子友綱、(みんなで綴る郷土史III 森吉町史資料編第11集　収録)

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