湯化竜

湯化竜（とう かりゅう）：激動の時代を生きた政治家

湯化竜（とう かりゅう、1874年 - 1918年）は、清末から民初にかけての政治家です。字は済武といい、弟には後に湖南都督を務めた湯薌銘がいます。湯化竜は、清末の立憲派の有力な指導者として活躍し、民国初期には安徽派の有力政客として存在感を示しました。

立憲派としての活動

1897年、湯化竜は黄州経古書院を卒業し、1902年には挙人となります。1904年には進士となり、その後、山西大学堂で国文教習を務めました。1906年、日本に留学して法政大学で法学を学び、法政学交通社の組織にも参加しました。

1908年に帰国した湯化竜は、湖北省で地方自治準備に携わり、咨議局籌弁処参事に任命されます。1909年には咨議局副議長に当選し、後に議長に選出されました。彼は、立憲派として国会の早期開会を目指し、1910年には各省咨議局連合会で議長を務め、国会開会請願を提出しました。清朝は1913年の国会開会に同意しましたが、湯化竜は満足せず、翌年の開会を求めます。しかし、清朝の弾圧に失望し、湖北へ帰郷しました。

1911年5月、皇族内閣が成立すると、湯化竜はこれを批判するために各省咨議局連合会に参加し、立憲君主制を目指す「憲友会」の中心人物となりました。武昌起義では当初非協力的でしたが、革命の機運が高まると実権掌握に動き、黎元洪の下で要職を得ます。しかし、革命派との対立により、湖北省での権力争いに敗れました。

初期国会での活動

1912年、中華民国臨時政府が成立すると、湯化竜は法制局副総裁に任命されますが辞退しました。その後、立憲派の要人たちと共和建設討論会を立ち上げ、梁啓超を領袖として支援しました。同年4月には臨時参議院副議長に選出されています。

同年5月、湯化竜は共和党に参加し、幹事を務めました。一方で、共和建設討論会を他の政治団体と合併させ、民主党を組織して幹事長に就任しました。1913年1月、衆議院議員に当選し、共和党、統一党、民主党の支持を受けて議長に選出されました。彼は、袁世凱を支持する政治姿勢を鮮明にし、3党合併による進歩党では理事を務めました。

二次革命でも袁世凱を支持しましたが、1914年に袁世凱が国会を解散すると、教育総長兼学術委員長に就任しました。しかし、袁世凱が皇帝即位を企てると、湯化竜は協力を拒否し、天津に引きこもってしまいます。その後、上海で反袁活動に参加し、袁世凱に退位を促しました。1916年5月には弟の湯薌銘が反袁独立を行いました。

安徽派の政客として

袁世凱死後、湯化竜は段祺瑞率いる安徽派の政客として活動し、国会再開後に衆議院議長に復帰しました。国民党議員が「憲法商榷会」を組織すると、梁啓超の支持を受け「憲法研究会」を立ち上げ対抗しました。また、省憲法制定に反対しました。

1917年には、段祺瑞による西原借款や対ドイツ宣戦を支持しましたが、段祺瑞が黎元洪に罷免されると議長を辞任しました。その後、段祺瑞が復権すると内務総長に任命されますが、直隷派の台頭に伴い段祺瑞が辞任すると、湯化竜も辞任しました。段祺瑞は徐樹錚らを信任し、湯化竜を遠ざけたため、失望した湯化竜は外遊の旅に出ます。

1918年9月1日、訪問先のカナダ・ビクトリアで、湯化竜は国民党員により暗殺されました。享年45歳でした。

湯化竜は、激動の時代において、立憲派、政党政治家、そして安徽派の政客として様々な顔を持ちました。彼の生涯は、清末から民初にかけての中国政治の複雑さと、激しい権力闘争を象徴していると言えるでしょう。

もう一度検索