湯宗

湯宗（とう そう、1365年 - 1427年）は、明代に活躍した官僚であり、字を正伝と称しました。温州平陽県を本貫とする彼は、その生涯において数々の困難に直面しながらも、職務を全うしようと努めました。

洪武帝の末期、湯宗は太学生という身分から河南按察僉事に抜擢され、その才能を早くから認められました。その後、北平按察僉事に転じ、燕王朱棣の動向を監視する役割を担うことになります。1399年、靖難の変が勃発する直前、湯宗は北平按察使の陳瑛が燕王邸から金銭を受け取り、謀議を共謀している事実を建文帝に報告しました。この報告により、陳瑛は逮捕され広西へ流罪となり、湯宗は山東按察使へと転出しました。しかし、ほどなくして罪に問われ、刑部郎中へと左遷、さらに蘇州府知府として赴任することになります。

蘇州府では、連年の洪水により民衆の生命と財産が失われ、租税の未納が100万石を超える深刻な状況でした。湯宗は富裕層を説得し米を供出させることで、わずか3ヶ月足らずで未納分の租税を完納させました。この功績は称賛に値するものでしたが、1403年、洪水の被害を座視していたという告発を受け、湯宗は逮捕され獄に下された後、禄勧州通判へと左遷されました。

1408年、黄淮の推薦により、湯宗は大理寺右丞として中央に召喚されます。しかし、過去に燕王邸を探り建文帝に報告した事実を告発され、再び窮地に立たされます。しかし永楽帝は、「帝王はただ才によって使役するだけだ」として、この告発を相手にしませんでした。ある時、外国の貢使が病死し、その従者が医者が使者を殺したと訴えました。湯宗は医者の調書を読み、「医者が使者と何の仇があり、なぜ殺したというのか」と疑問を抱き、弁護することで医者を釈放させました。この一件からも、湯宗の公正で人道的な一面が窺えます。

その後、湯宗は河南の飢饉に対する救援活動を命じられ、南京に戻ると戸部の事務を代行しました。1411年、解縉が投獄されると、湯宗も連座して十数年間獄に繋がれることになります。しかし、1424年に洪熙帝が即位すると、湯宗は南京大理寺右丞として官に復帰し、その年の12月には南京大理寺左少卿へと昇進、翌1425年1月には大理寺卿となりました。

1426年1月、湯宗は山東に赴き、軍の粛正を行いました。同年4月、北京に召喚された際には、旱魃による民間の窮状を報告しました。この報告を受けて宣徳帝は免租免役を行い、不急の事業を中止しました。湯宗は民衆の生活を第一に考え、そのために尽力しました。1427年1月、湯宗は63歳でその生涯を終えました。彼の功績は、明史にも記されています。

湯宗は、その生涯を通じて、困難な状況にも屈することなく、正義を貫き、民を救うために尽力した人物として、歴史に名を刻んでいます。彼の物語は、官僚としてのあるべき姿を示すと同時に、為政者にとって民衆の生活が最も重要であることを教えてくれます。

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