黄淮

黄淮（こう わい）は、明代初期に活躍した官僚であり、その生涯は激動に満ちていました。至正27年（1367年）に生まれ、正統14年（1449年）に83歳で亡くなるまで、明朝の政治に深く関わりました。

初期のキャリア

黄淮の父である黄性は、元末に地方勢力の方国珍が温州を占拠した際に、その支配を避けて身を隠しました。黄淮は明の洪武帝の末年に進士に及第し、中書舎人に任じられます。建文4年（1402年）、永楽帝が即位すると、その才能を見込まれて召し出され、皇帝の側近として仕えることになります。彼は解縉と共に、皇帝の諮問に備え、常に左右に控えていました。

永楽帝は、黄淮ら6人を文淵閣に宿直させ、翰林編修に転じ、さらに侍読に進めました。永楽2年（1404年）、皇太子を立てる議論が起こると、黄淮は嫡長子を立てることを主張しました。この結果、朱高熾が皇太子に立てられると、黄淮は侍読を兼ねたまま、左庶子に転じました。

要職を歴任

永楽5年（1407年）、解縉が左遷されると、黄淮は右春坊大学士に進みます。永楽6年（1408年）には、胡広、金幼孜、楊栄、楊士奇とともに、皇太孫朱瞻基の輔導役を任されました。永楽7年（1409年）、永楽帝が北巡に出立すると、黄淮は蹇義、金忠、楊士奇とともに、皇太子の監国を補佐しました。さらに永楽11年（1413年）、永楽帝が再び北巡した際には、北京の留守を任されるなど、重要な役割を担いました。

投獄と復権

永楽12年（1414年）、永楽帝が第二次漠北遠征をおこなった際、皇太子の迎えの使者が遅れたことをきっかけに、漢王朱高煦による讒言が2度も行われました。これにより、永楽帝は東宮の属僚たちを全員投獄してしまいます。黄淮もまた、楊溥や金問らとともに罪に問われ、10年もの間、獄に繋がれることになりました。

しかし、永楽22年（1424年）に洪熙帝（朱高熾）が即位すると、黄淮は官に復帰します。その後、彼は抜擢されて通政使となり、武英殿大学士を兼ね、楊栄、金幼孜、楊士奇らとともに内政を管掌しました。母親が亡くなった際には、服喪のための辞職を願い出ますが、許可されませんでした。洪熙元年（1425年）には、大学士を兼ねたまま、少保・戸部尚書に進みました。

洪熙帝が急逝した際、皇太子朱瞻基は南京にいました。漢王朱高煦が野心を抱いており、朝廷内外は次期皇帝の座を巡って疑心暗鬼に陥っていました。この状況に黄淮は深く憂慮し、吐血してしまうほどでした。

晩年

宣徳元年（1426年）、宣徳帝（朱瞻基）が自ら楽安州の朱高煦を討伐すると、黄淮は北京の留守を命じられました。宣徳2年（1427年）、病のために帰休を願い出て許され、故郷で父の黄性の最期を看取ります。宣徳6年（1431年）に黄性が亡くなると、黄淮は宣徳帝から葬祭を賜りました。黄淮は感謝を述べるために宮殿を訪れ、西苑での遊覧の栄を賜り、肩輿に乗って万歳山を登りました。

宣徳8年（1433年）、会試の主試験官となるよう命じられますが、これを辞退して故郷に帰りました。太液池で餞別を受けた際、宣徳帝は長歌を黄淮に贈り、「朕の誕生日に卿はまた来るように」と言いました。宣徳9年（1434年）、黄淮は宣徳帝の誕生日を祝うために入朝し、宣徳10年（1435年）には英宗が即位した際にも再び入朝しました。

正統14年6月3日（1449年6月22日）、黄淮は83歳でこの世を去りました。諡は文簡といい、著書には『省愆集』2巻、『詞』1巻がありました。彼の生涯は、明代の政治に深く関わり、多くの変遷を経験したものでした。

もう一度検索