湯屋番

湯屋番（ゆやばん）

概要

「湯屋番」は、古典落語の中でも特に愛されている演目の一つです。この作品の特徴は、主人公に道楽者の若旦那が採用されている点です。タイトルの「湯屋番」は、湯屋の番台を意味しており、この場所が物語の舞台となります。江戸時代から伝わるこの話は、多くの演者によって語り継がれており、特に明治時代の初代三遊亭圓遊が有名です。その後、代々柳家一門などの演者によって広められました。

特に注目すべきは、3代目柳家小さんが現代に通じるスタンダードを築き、そのスタイルを基にして、新作派の4代目柳家小さんが「帝国浴場」として新たにアレンジした点です。さらに、現代においては10代目柳家小三治や、弟子の柳家三三がこの演目を取り上げており、伝統の継承が続いています。大阪では3代目笑福亭仁鶴も「湯屋番」を手掛けるなど、全国的に親しまれていることがわかります。

あらすじ

物語の主役である若旦那は、吉原通いに夢中になり、親元から勘当されてしまいます。現在は、大工の熊五郎宅の二階に住まわせてもらっていますが、彼は働こうとはせず、遊び暮らしています。そんな若旦那を見て、棟梁が「どこか弘をしよう」と助言すると、彼は湯屋で働きたいと希望します。棟梁は紹介状を出してくれましたが、若旦那は湯屋で求められた燃料集めや煙突掃除を断り、女湯の番台を任せてもらうよう要求します。

ところが、いざ上がってみると女湯には誰もおらず、失望した若旦那は自ら妄想の世界に浸り始めます。女性客に惚れられた自分の姿を思い描き、生き生きと一人芝居を始めます。それを見かけた男湯の客たちは、彼の滑稽な様子に興味を持ち、見物しに集まります。若旦那の妄想はエスカレートし、一人の男性が若旦那に対し怒鳴りますが、返す言葉はユーモラスで、下駄を探しても見つからない中、平然と自分の提案をする若旦那に周囲は驚かされます。彼は「高そうな方を履きなさい」と声を上げ、他の客が困るかもと指摘されると、「よいですよ、順番に履かせるから最後は裸足」などと答えます。

このように、若旦那の軽妙洒脱なやりとりが物語の面白さを引き立てています。

銭湯の名前の変化

この噺の面白い特徴の一つは、演者により舞台となる銭湯の名前が異なる点です。例えば、柳家小さん系の演者では「奴湯」となり、三遊亭一門では「桜湯」と名付けられます。

若旦那の居候先

若旦那が居候する家として有名なのは、大工の「熊五郎」の家庭です。この設定は、他の話でも繰り返されることがしばしばあります。例えば、『紙屑屋』などでも若旦那はマイペースに振る舞い、周囲の人々を振り回します。

まとめ

「湯屋番」は、古典落語の中でも笑いとユーモアが豊富で、多世代にわたって愛されてきた作品です。落語の魅力を新たに感じさせるこの演目は、これからも多くの演者によって語り継がれることでしょう。

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