紙屑屋

紙屑屋（かみくずや）

『紙屑屋』は、古典落語の演目の一つ。上方落語では『天下一浮かれの屑より』という名で知られ、音曲がふんだんに盛り込まれた賑やかな噺です。特に、2代目桂小文治や5代目桂文枝が得意としていました。

あらすじ

道楽が過ぎて勘当された若旦那が、出入り先の棟梁の家に居候しています。しかし、全く働かず遊び呆けているため、周囲からの評判は芳しくありません。見かねた棟梁は、若旦那に奉公に出ることを勧めます。「真面目に奉公すれば、それが大旦那様の耳に入り、勘当が解かれるかもしれません」と。

若旦那が紹介されたのは、町内の紙屑屋（現在の古紙回収業）。早速、主からアドバイスを受け、留守中に紙の仕分けを任されます。

「えーと…。白紙は白紙、反古は反古、陳皮は陳皮…」

仕事に取り掛かるものの、道楽時代の癖が抜けず、大声で歌い出してしまい、なかなか捗りません。挙句の果てには、誰かが書いたラブレターを見つけて夢中で読み耽ってしまいます。気を取り直して仕事を再開しますが、今度は都々逸の底本を見つけ、唸り出す始末。再び仕事を始めますが、今度は義太夫の底本を発見し、役者になりきって芝居の真似事を始めてしまいます。そこへ、主が帰ってきて…。

「何をやっているんですか？全く、あなたは人間の屑ですねぇ…」

すると若旦那は、

「屑？今、選り分けているところです」

概要

上方版の演目名にもなっている『天下一』は、サイコロ賭博の目の一つで、これが出ると場にある金は全て胴元のものになるというルールでした。元々は、屑の山から出てきたサイコロで遊んでいるうちにこの目が出て、「総取りや！」と、せっかくより分けた屑をかき集めるという落ちが使われていました。

作中には踊りの場面も登場しますが、高座で立って踊るわけにはいかないため、立膝で踊る必要があり、見た目の派手さとは裏腹に、演者には相当な体力が要求されます。踊りの素養があった文枝の高座は、話の一演出であることを忘れさせるほど流麗だったと言われています。上方落語では、『はめもの』と呼ばれる三味線やその他の楽器、歌がふんだんに盛り込まれるのが特徴です。

上方での演出

上方版では、恋文のエピソードや、幇間の踊り「吉兆まわし」、「義経千本桜・吉野山」の狐忠信の軍語りのくだりなどが盛り込まれ、最後は「娘道成寺」へと繋がります。鞠突きの三味線の音が隣の稽古場から聞こえ出し、居候が踊り出すと、長屋全体が一緒になって踊り出すという騒ぎになります。

サゲは、「これ！ええかげんにせんかい。あんさんがたは人間の屑じゃな！」「へえ、最前よりより分けておます」または「俵があったら入りとうございます（紙屑は俵に入れていたことによる）」などがあります。

関連項目

落語
上方落語

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