満朝薦

満朝薦（まん ちょうせん、1561年 - 1629年）は、明代に活躍した官僚であり、字を震東と称しました。彼の出身は辰州府沅州麻陽県です。

1604年、満朝薦は進士に合格し、官吏としてのキャリアをスタートさせます。最初に任じられた咸寧知県の職務において、彼はその有能さと清廉さを示し、人々に知られるようになりました。しかし、彼の正義感は、御馬監監丞の梁永という権力者との衝突を引き起こします。梁永が部下を使って庶民の財産を奪っていた事実を知った満朝薦は、その部下を逮捕して尋問しました。この行為は梁永の怒りを買い、満朝薦は刑事と税役を専断していると弾劾されてしまいます。1606年1月、万暦帝の勅命により官位を一つ降格させられるという憂き目に遭いました。大学士の沈鯉らが弁護に尽力しましたが、帝の意志は変わらず、彼の処分は覆りませんでした。

しかし、満朝薦の不屈の精神はここで終わることはありませんでした。1606年3月、陝西巡撫の顧其志が梁永の貪欲かつ残虐な行為を非難したことで、満朝薦は知県の地位に復帰します。この時、彼の処分は俸給一年分の剥奪に軽減されました。さらに、1607年には、梁永が人を派遣して陝西巡按御史の余懋衡を呪っていたという事件が発覚します。満朝薦は梁永の派遣した人物を捕らえましたが、梁永は武装した部下を率いて県庁に侵入し、証拠を奪おうとしました。しかし、事前に襲撃を警戒していた役人たちの反撃にあい、梁永らは証拠を奪うことなく退散を余儀なくされました。この騒動は数夜にわたり城中を混乱させ、梁永が反乱を起こしたという噂まで流れました。

この事件の後、満朝薦は余懋衡と共に梁永を追及しました。その結果、多くの悪党が逃亡しました。満朝薦は彼らを追って渭南に赴き、格闘の末に負傷するという苦難を経験します。しかし、梁永は満朝薦が帝への貢物を奪い、数人を殺害し、死体を川に投げ込んだという虚偽の訴えを起こしました。これに激怒した万暦帝は、使者を派遣して満朝薦を逮捕させ、厳しい尋問を行いました。満朝薦は獄に下され、拷問を受けることとなり、長期間拘留されました。この時、大学士の朱賡をはじめとする多くの人々が110回にも及ぶ上奏を行い、満朝薦の無実を訴えましたが、なかなか聞き入れられませんでした。ようやく1613年秋、大学士の葉向高が満朝薦の釈放を求めたことで、彼はようやく獄から解放され、故郷に戻ることができました。

1620年、泰昌帝が即位すると、満朝薦は南京刑部郎中として再び官界に復帰し、その後尚宝司卿に転じました。1622年、後金の侵攻により遼東が失陥すると、朝廷内での党派争いが激化しました。この状況を憂慮した満朝薦は、時事に対する憂慮と批判を記した上奏文を提出しました。その後、太僕寺少卿に昇進しますが、この上奏が魏忠賢の怒りを買い、職を剥奪されてしまいます。大学士の葉向高が弁護しましたが、天啓帝はこれを聞き入れませんでした。魏忠賢一派が『東林同志録』を編纂すると、満朝薦はそれに名を連ねられ、官界から完全に排除されてしまいました。

1629年、満朝薦は推薦により元の官職に復帰することになりますが、上京することなく、その生涯を終えました。享年は69歳でした。

満朝薦の生涯は、権力に屈せず、正義を貫くことの難しさと尊さを教えてくれます。彼の不屈の精神は、後世の人々にとって大きな教訓となるでしょう。

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