満願寺 (安曇野市)

満願寺：安曇野の霊場を訪ねて

長野県安曇野市に佇む満願寺は、真言宗豊山派に属する寺院です。栗尾山を背に、信濃三十三番札所の二十六番札所として、古くから信仰を集めてきました。「信濃高野」とも呼ばれるこの寺院は、神亀年間（725年頃）の創建と伝えられています。寺伝によれば、池から出現した小さな仏像を祀り堂宇を建立したのが始まりとされています。

また、坂上田村麻呂が八面大王を討伐した際に助力を受けたという伝承も残っており、彼が再興に携わったとする説もあります。ただし、同様の伝承を持つ寺院が近隣に複数存在することから、その信憑性については異論もあります。

歴史を紐解くと、源義仲（木曽義仲）が養和年間（1181年頃）に山林を寄進したという記録が残されています。中世以降は安曇郡を治めた仁科氏が保護していましたが、同氏の滅亡後、織田信長以降の天下人は安曇郡を松本城主の所領としました。天正10年（1582年頃）には、当時の松本城主、小笠原貞慶による再建修理が行われ、現在地に移転しました。その後は松本藩の庇護を受け、発展を続けました。十返舎一九の『続膝栗毛』にも、満願寺参拝の場面が描かれていることから、江戸時代には広く知られた寺院であったことが伺えます。

明治3年（1870年）、廃仏毀釈により一時廃寺となりましたが、6年後の明治9年（1876年）に再興を果たし、現在に至っています。

美しい境内と霊験あらたかな場所

満願寺の境内は、四季折々の美しい自然に彩られています。春には桜、初夏にはツツジ、秋には紅葉と、訪れる時期によって異なる景色を楽しむことができます。また、境内からは良質な湧水が湧き出ており、安曇野の名水として知られています。

参道の入口には、長さ10m、幅2.5mの木橋が架かっています。この橋は「微妙橋」または「お経橋」と呼ばれ、橋板の裏側には経文が書かれています。そのため、橋を渡る際にはお経を唱えるべきだと伝えられています。屋根付きの構造も特徴的です。

お経橋のたもとには地蔵堂があり、500体以上のお地蔵様が祀られています。特に子授け地蔵として信仰を集めており、この地蔵を借りて添い寝すると子宝に恵まれると伝えられています。

アクセスと周辺情報

満願寺へのアクセスは、JR東日本篠ノ井線明科駅または大糸線穂高駅から、牧行きバスで約40分、終点下車後徒歩40分です。信濃三十三番観音霊場の巡礼の際には、前後の札所である二十五番札所の盛泉寺、二十七番札所の牛伏寺も合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。

満願寺は、歴史と自然、そして信仰が調和した、安曇野を代表する霊場です。静寂の中で歴史に思いを馳せ、自然の美しさに癒やされる、そんなひとときを満喫できる場所と言えるでしょう。

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