小笠原貞慶

小笠原貞慶：激動の時代を生き抜いた武将

小笠原貞慶（おがさわら さだよし／さだのり）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、信濃国深志城（現在の松本城）の城主として知られています。信濃守護大名・小笠原長時の三男として生まれ、小笠原流弓馬術礼法の宗家でもありました。

生涯

天文15年（1546年）、小笠原長時の三男として林城で誕生しました。父・長時の時代、甲斐国の武田晴信（信玄）が信濃へ侵攻を開始。長時は村上義清らと武田氏に対抗しましたが、天文17年（1548年）の塩尻峠の戦いで敗北し、その後は諸国を放浪する生活を送りました。

近世の系譜史料によれば、長時親子は上杉氏（越後長尾氏）を頼り、越後国へ逃れた後、貞慶は7歳の時に伊勢国を経て京へ。叔父たちと共に三好氏を頼ったとされています。京では信濃復帰を願い活動し、永禄4年（1561年）には長時と共に本山寺へ寺領寄進を約束しました。この頃、「貞虎」から「貞慶」へと改名。長尾景虎（上杉謙信）と三好長慶から一字ずつ拝領したと考えられています。

長時は三好長慶の死後、上杉謙信、次いで会津の蘆名氏を頼りましたが、貞慶は京に留まりました。永禄12年（1569年）の六条合戦（本圀寺の変）では三好三人衆軍の一員として参戦。織田信長に敗れた後は織田側につきました。元亀4年（1573年）に信長が足利義昭を追放すると、天正3年から9年ごろにかけて信長の使者として東国の大名たちとの交渉を担当し、信濃筑摩郡に所領を約束されました。

天正7年（1579年）、貞慶は会津で父・長時と再会し、家宝を受け継いで家督を相続しました。天正10年（1582年）の甲州征伐では深志城を落城させた織田長益に謁見しますが、小笠原旧領は木曾義昌に与えられ、回復は叶いませんでした。しかし、本能寺の変後、天正壬午の乱で旧領回復を目指し徳川家康に臣従。小笠原旧臣の支援を得て深志城を奪還し、大名として返り咲きました。この際、深志城を松本城と改名しています。

天正11年（1583年）には筑摩郡北部の青柳城、麻績城を巡って上杉氏と争い、天正12年（1584年）には木曾義昌の本領である木曽福島城を攻めました。天正13年（1585年）、石川数正が豊臣秀吉のもとへ出奔すると、貞慶もこれに従い豊臣氏の家臣となりました。一説には、貞慶が真田昌幸とともに秀吉と内通していたことが家康に露見したためとも言われています。

天正18年（1590年）、小田原征伐で前田利家軍に従い軍功を挙げ、秀吉から讃岐半国を与えられましたが、九州の役の際に尾藤知宣を庇護していたことが発覚し、秀吉の怒りを買い所領を没収され改易となりました。その後、再び徳川家康に仕え、家康の関東入りに従い、秀政の領地として下総古河3万石を与えられました。文禄4年（1595年）に50歳で死去。茨城県古河市の隆岩寺に供養塔があります。

家臣

犬甘久知
二木重吉
溝口貞泰
毛利時定
二木盛正
犬甘政信
沢渡盛忠

参考文献

阿部猛; 西村圭子 編『戦国人名事典』（コンパクト）新人物往来社、1990年、196-197頁。ISBN 4404017529。
今井尭「小笠原系図」『日本史総覧』 3（中世 2）、新人物往来社、1984年。 NCID BN00172373。
平山優『天正壬午の乱 : 本能寺の変と東国戦国史』学研パブリッシング、2011年。ISBN 9784054048409。
福山寿久 編『国立国会図書館デジタルコレクション 信濃史蹟. 上』信濃新聞社、1912年、254-273頁。
堀田正敦『国立国会図書館デジタルコレクション 寛政重脩諸家譜. 第1輯』國民圖書、1922年、1105頁。

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