源義清 (武田冠者)

源義清：甲斐源氏の祖、その生涯と足跡

源義清（みなもと の よしきよ）は、平安時代後期の武将であり、河内源氏の流れを汲む甲斐源氏の初代当主として知られています。『尊卑分脈』によると、彼は新羅三郎義光（しんらさぶろうよしみつ）の三男（または次男）として生まれました。母は平清幹（たいらのきよもと）の娘であり、信濃源氏の祖である源頼季（みなもとのよりすえ）の甥にあたります。

生い立ちと武田氏の祖へ

義清は幼名を音光丸（おとみつまる）といい、通称として刑部三郎、武田冠者とも呼ばれました。この「刑部」という通称は、父・義光が刑部丞（ぎょうぶのじょう）であったことに由来すると考えられています。義清には、佐竹氏の祖となった義業（よしなり）、福士氏の祖となった実光（さねみつ）などの兄弟がいました。

義清は、父・義光から常陸国那珂郡武田郷を譲り受け、「武田冠者」を名乗りました。その後、源兼宗（みなもとのかねむね）の娘を妻とし、天永元年（1110年）には嫡男・清光（きよみつ）が誕生しました。

抗争と甲斐への配流

大治5年（1130年）、義清の子・清光が武田郷の境界を巡って、平清幹の嫡男で常陸の在庁官人である大掾盛幹（だいじょうもりもと）と争い、義清親子は敗北してしまいます。この争いの結果、天承元年（1131年）には朝廷の怒りを買い、甲斐国市河荘（いちかわのしょう）へ配流されることになりました。

甲斐での拠点構築と晩年

甲斐国へ移った義清は、巨摩郡平塩岡（現在の山梨県西八代郡市川三郷町市川大門）に館を構え、その後、市河荘司となりました。その後、八ヶ岳南麓の巨摩郡逸見郷へ進出し、若神子城を築城し、多麻荘若神子を本拠地としました。

義清は久安元年（1145年）7月23日、市河荘で亡くなったとされています。彼の墓所とされる場所は、山梨県昭和町西条にある義清神社の近くにある義清塚です。義清神社は、義清が晩年に居住した居館跡という伝承も残っています。また、義清の和歌「いとどしく 埴生の小屋の いぶせきに 千鳥鳴くなり 市河の里」の歌碑も境内に建立されています。

甲斐源氏の繁栄

義清の子孫は甲府盆地各地に土着し、甲斐源氏として繁栄しました。清光以降、その血筋は脈々と受け継がれ、武田氏を筆頭に、南部氏、小笠原氏、三好氏など、多くの有力な武家を輩出しました。

現代に残る義清の足跡

近代に入り、1894年（明治27年）には義清750年祭が開催され、義清神社に石碑が建立されました。この石碑は、当時の村長と神主が文学博士・川田剛に撰文を依頼し、書は日下部東作、題額は公爵・近衛篤麿が担当したものです。石碑の内容は義清の徳政を讃えたもので、建立には武田氏の子孫や甲州財閥の若尾逸平らが参加しました。

このように、源義清は甲斐源氏の始祖として、その子孫は日本史に大きな足跡を残しました。現代においても、義清の遺した史跡や伝承は、地域の人々に大切に受け継がれています。

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