滋賀県道16号大津信楽線

滋賀県道16号大津信楽線：信楽への道、そして防災の要

滋賀県大津市から甲賀市信楽町に至る主要地方道、滋賀県道16号大津信楽線は、通称「信楽道」として親しまれる重要な路線です。大津市街地から堂、平野地区を経て、大戸川の渓谷沿いを進み、信楽山地へと伸びる道は、大津市と甲賀市（水口町）を結ぶ近道として機能しています。国道1号が草津市や栗東市を経由するのに対し、本路線は田上山地の谷間を抜け、信楽を経由して短距離で両市を繋ぐ役割を担っています。

大戸川ダム建設と道路付け替え

大津市牧から甲賀市信楽町黄瀬間の区間は、1日あたり約5,000台もの車両と大型バスが通行する一方、道路幅員が狭隘でした。この状況を改善するため、大戸川ダム建設に伴い大規模な道路付け替え工事が実施されました。

この工事は、滋賀県と国土交通省がそれぞれ担当区間を施工。大津市平野町から3,350mは滋賀県、その先の甲賀市信楽町黄瀬までの7,086mは国土交通省が担当しました。当初、大戸川ダム建設の見送りが検討された際には、付け替え道路の予算削減も検討されましたが、コスト削減を条件に工事が継続されました。

2019年度には、大津市平野町から新名神高速道路の高架橋に沿って山間部に至るルートが開通。その後、大戸川南岸を渡り、新3号橋で北岸に渡って標高を上げ、山腹を縫うように甲賀市信楽町黄瀬に至るルートが完成しました。最終的に、激甚化する豪雨災害への対策として、大戸川ダムは治水目的で規模を縮小して建設されることとなりました。

この道路付け替え工事は、国道422号のバイパス整備と連携し、大津市から甲賀市信楽地域、さらには三重県方面へと続く、災害に強い道路ネットワークの形成に大きく貢献しています。

歴史と変遷

本路線は1958年（昭和33年）に滋賀県道110号牧大津線として認定されました。その後、1972年（昭和47年）に主要地方道となり、路線名称を「大津信楽線」に、路線番号を「110」から「345」に変更。さらに1990年（平成2年）には路線番号が「345」から現在の「16」に変更されました。

歴史の中では、1988年（昭和63年）3月30日には大津市桐生町で発生した法面崩落による死亡事故が大きな出来事として記録されています。約190m3の土石が崩落し、2名の犠牲者を出しました。この事故は、急傾斜地における道路建設が斜面を不安定化させた可能性を示唆しています。

また、2021年8月には大雨による土砂崩れで通行止めが発生するなど、自然災害への脆弱性も課題となっています。

路線データと周辺環境

起点: 大津市神領3丁目（滋賀県道2号大津能登川長浜線・滋賀県道57号瀬田西インター線交点）

終点: 甲賀市信楽町牧（国道307号交点）

本路線沿いには、滋賀県立瀬田工業高等学校、滋賀県立瀬田高等学校、大宝工業関西滋賀工場、瀬田ゴルフコース、大津上田上郵便局などの施設が立地しています。また、大戸川発電所や大鳥居発電所といった発電施設も沿線にあります。

まとめ

滋賀県道16号大津信楽線は、地域住民の生活道路として、また、信楽焼などの地域産業を支える重要な交通インフラとして機能しています。大戸川ダム建設に伴う道路付け替え工事は、防災対策の観点からも大きな意義を持つとともに、歴史の中で繰り返されてきた自然災害への備えを改めて考えさせる事例となっています。今後の道路整備においては、安全性の確保と災害への対応が重要であり続けるでしょう。

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