漏話

漏話（ろうわ）とは

漏話とは、電気信号やデータ信号が、本来伝送されるべき回線から他の回線へ意図せず漏れ出す現象のことです。この現象は、クロストーク（Crosstalk）や混線とも呼ばれ、信号の品質を劣化させる原因となります。

漏話の発生メカニズム

一般的に、漏話は伝送路を流れる電気信号が、電磁的な結合によって他の信号線に影響を与えることで発生します。具体的には、信号線同士が近接している場合、一方の信号線に流れる電流によって生じる磁場が、もう一方の信号線に誘導電流を発生させ、この誘導電流がノイズとして信号に混入します。その結果、本来の信号波形が乱れ、受信側で正常に信号を復元できなくなるという問題が生じます。

アナログ時代とデジタル時代の漏話

アナログ電話回線が主流だった時代には、音声信号が銅線ケーブルを通じて長距離伝送される過程で、平行するケーブルとの間で電磁的な干渉が頻繁に発生していました。これにより、音声信号が他の回線に漏れ、通話中に他の人の会話が聞こえたり、逆に自分の会話が他の人に漏れてしまうといった現象が発生していました。1980年代には、時報サービスで通話中に他の利用者と会話できるという事例も報告されています。

データ通信においては、ADSL導入時にISDNとの帯域干渉が問題となりましたが、Dual BitMap技術によりこの問題は回避されました。

現在では、デジタル交換機への移行が進み、公衆交換電話網もデジタル化されたため、アナログ音声信号の漏話は稀になっています。しかし、デジタル信号をGHz帯の高周波で長距離伝送する際には、他の信号による干渉で信号波形が乱れることがあります。これが現代における一般的な漏話の問題です。

遠端漏話と近端漏話

漏話は、発生場所によって影響の大きさが異なります。

遠端漏話（FEXT: Far End Crosstalk）
原因となる信号線と影響を受ける信号線が、送信端から同じ程度の距離にあるか、原因側が送信端から遠く、影響を受ける側が送信端に近い場合に発生します。
信号は伝送されるにつれて減衰するため、遠端漏話の影響は比較的軽微です。

近端漏話（NEXT: Near End Crosstalk）
原因となる信号線が送信端に近く、影響を受ける信号線が受信端に近い場合に発生します。
送信端に近いほど信号電圧が大きいため、近端漏話は大きな問題となることが多いです。

漏話の回避策

漏話の影響を軽減するためには、以下のような対策が用いられます。

ツイスト線
2本の信号線を撚り合わせることで、電磁放射の向きを周期的に反転させ、相互の干渉を打ち消す効果があります。
複数のツイスト線を束ねる場合は、撚り間隔をそれぞれ変えることで、干渉を防ぐことができます。
LANケーブルに用いられるUTPケーブルが代表例です。

シールド線
信号線の外側を絶縁体を介して金属網で覆うことで、電磁的な影響を遮断します。
一般的にはシールドを接地しますが、接地点を誤るとシールド自体がノイズを放射するアンテナになる可能性もあります。
高周波の信号に対して効果が高いですが、低周波の信号に対しては効果が小さくなります。

同軸ケーブル
中心の導体の周囲を絶縁体を介して外部導体が覆う構造で、漏話耐性が高く、高周波特性にも優れます。
高速伝送路で広く採用されています。

フラットケーブル
* ツイスト線に比べて、近端漏話の影響を受けにくいとされています。

光ファイバーにおける漏話

光ファイバーケーブルでは、基本的に電磁的な干渉は発生しません。しかし、複数の光ファイバーが平行して敷設され、被覆内のクラッド同士が接触するような場合には、ファイバーの種類によっては漏話が発生する可能性があります。

まとめ

漏話は、伝送路における信号の品質を劣化させる要因であり、その影響を軽減するための対策が不可欠です。アナログ時代には電話回線で大きな問題でしたが、デジタル化が進んだ現在でも、高周波信号を利用する通信において注意が必要です。適切なケーブル選択や配線方法によって、漏話の影響を最小限に抑えることができます。

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