演藝画報の概要と歴史
『演藝画報』(えんげいがほう)は、
1907年から
1943年まで刊行されていた日本の著名な
歌舞伎雑誌です。この雑誌は、戦時中の
情報局の介入により他の
演劇雑誌と合併し、結果的にその幕を下ろすこととなりましたが、その後の『
演劇界』へと受け継がれました。その活動は2022年まで続き、
演劇の発展に大きく寄与しました。
刊行の背景と特徴
『演藝画報』は主に月刊誌として発行され、440巻にも及ぶ膨大な号数を数えました。各号は主に
歌舞伎に焦点を当てつつも、
新派・
新国劇・
喜劇など、当時の商業
演劇や
新劇、
邦楽、舞踊、人形浄瑠璃、
落語、
講談、映画、
大道芸に至るまで、幅広い演芸分野を取り扱っていました。これにより、読者は多様な芸能に触れることができ、また巻頭には舞台の美しい写真が掲載されることで、視覚的にも楽しむことができました。
特に名物記事として知られる「名家真相録」と「芝居見たまま」は、多くの読者に愛されました。「名家真相録」では、
歌舞伎や文楽、能の俳優たちについての素顔やエピソードが聞書形式で記され、観客の興味を引きました。また、「芝居見たまま」では舞台上の演技を誌上で再現する試みが行われ、この人気記事は他の雑誌での同名記事の連載にもつながりました。さらに、「画報」という名称の通り、多数の役者や舞台の写真が掲載され、これらの画像は特に地方に住む読者にとって、当時の役者を知る貴重な情報源となりました。
創刊の歴史
『演藝画報』は
1907年1月1日に初号を発行し、初代編集長には中田辰三郎が就任しました。中田はもともと政治記者として働いていましたが、
演劇雑誌への興味からこの雑誌の創刊を決意しました。初年度の発行部数は順調に推移し、1908年3月には創刊一周年を記念した特別公演が
歌舞伎座で行われました。このような成功を経て、1909年には「名家真相録」の連載が始まり、さらに1911年には「芝居見たまま」の連載が行われるようになりました。
しかし、雑誌の道は平坦ではありませんでした。
1923年の
関東大震災で社屋が焼失し、一時休刊を余儀なくされました。震災後、復刊を果たした『演藝画報』はその内容を徐々に
歌舞伎専門の視点に寄せていきました。また、その他の研究雑誌と競争しながらも、内容の充実を図り、多くの読者に支持され続けました。
最終号とその後
1943年には第二次世界大戦の影響で、
情報局の指示により他の
演劇雑誌との合併が決定され、最終号として発行されたのは10月号でした。この号には、長年にわたる歴史を振り返る内容が掲載され、その後の『日本
演劇』や『
演劇界』へと受け継がれました。これにより『演藝画報』の精神や方針は後の雑誌に引き継がれ、実質的にその流れは続くことになりました。
評価と研究
『演藝画報』は
演劇資料としても高く評価されています。古い演目の復活上演を行う際の貴重な参考資料として用いられ、
歌舞伎関係者の間では「虎の巻」とも称されています。また、
明治・大正・
昭和にかけての日本の近代化の記録として、研究者によってその価値が認識されています。そのため、復刻版の発行や詳細な索引作成が進められました。
このように、『演藝画報』は単なる
歌舞伎雑誌以上の役割を果たし、日本の
演劇文化を広く伝える重要な媒体であったことが分かります。また、その写真は
演劇メディアの変革に寄与し、
演劇を広める手助けをしました。