漕運

漕運の歴史とその重要性

漕運（そううん）とは、広義には中国、日本、朝鮮などの水上輸送システム全般を指し、狭義には中国の王朝が官主導で河川や運河、海上を利用して物資を輸送した行為を意味します。この漕運は、非常に広範囲にわたる中国の歴史の中で、特に重要な役割を果たしてきました。

漕運の目的と分類

漕運は大きく三つの目的に分類されます。まず一つ目は、地方で集められた租税を首都へ輸送することです。二つ目は、首都に住む皇帝や官僚への生活物資の供給です。そして三つ目は、辺境地域への軍事物資の輸送です。これらは時代とともに経路が変わることがあり、その変化は歴史的事件や王朝の需要に大きく依存しました。

最初は、山東から黄河を遡上して物資が運ばれていましたが、後に江南からのルートに変更され、北京に首都が固定されるとさらに北京への経路へと進化しました。軍事物資についても周辺国の情勢によって重要な地域が変わるため、輸送ルートの変更が常に求められました。

政策的課題としての漕運

漕運が単なる物資輸送を超えて、中国の王朝にとって重要な政策問題であった理由は、広大な国土と膨大な官庁や軍の需要に応じる必要があったからです。物資の円滑かつ低コストな輸送は国家の安定性に直結したため、多くの論点が生じました。これには以下のような問題が含まれます：

• - 水運網の維持・管理について
• - 漕運に携わる船と人員の統制
• - 直達法と転搬法のどちらが効率的か
• - 明の海運と海禁政策の関連
• - 輸送費用の負担を誰が負うか

これらの課題を適切に解決することが、歴代の王朝にとって死活問題でした。

漕運の歴史的展開

古代から魏晋南北朝まで

中国では古代から漕運のルーツがあります。戦国時代に人工的な運河が掘られ、秦による統一後には北方国境に兵糧を輸送する仕組みが確立されました。前漢時代には、首都長安の人口増加と官僚機構の膨張に伴い、黄河下流からの輸送が本格化し、最大600万石の穀物が輸送されました。その後、後漢や三国時代を経て、漕運はさらなる発展を遂げたのです。

隋唐五代宋

隋の再統一時代には江南の経済力が増大し、大運河が構築されました。この運河により、食糧を効率的に首都に運ぶことが可能になりました。しかし、煬帝の圧政がこの運河建設に影を落とし、その後の唐王朝では漕運の制度が整備され、年間400万石の輸送を記録するまでに至ります。しかし、安史の乱による破壊で漕運機能は失われ、不安定な食糧供給が常態化しました。

汴京と北宋の時代

五代の王朝と北宋では汴京を首都として選び、物資の搬入をスムーズにするために漕運を活性化させました。特に北宋時代には、年間800万石の輸送が成功しますが、冬の水位低下や土地の不正行為がその効率を妨害しました。

元以後の漕運

元の統治下、漕運網は再び見直され、特に海運の導入が進みました。明代に入ると、海禁政策が強化され、漕運が再び重視されましたが、運営の不正も問題となりました。清代に入ると、海運の導入が進むものの、経済発展に伴い、鉄道が普及し、漕運はますます過去のものとなりました。

終焉

鉄道の発展は漕運に代わる新たな輸送手段となり、1900年以降、官による漕運は全面的に廃止され、民営に移行します。そして、辛亥革命に至るまでに、江南と北京の物資輸送は鉄道によって支えられることとなりました。

結論

漕運は歴代中国王朝にとって、経済や社会システムの基盤であり、物資の動きが国の安定を左右する重要なものでした。歴史を通じて進化を続けてきた漕運の制度は、最終的に近代化の波に飲み込まれ、歴史の一部として消えていきました。

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