漢那ダム

漢那ダムの概要

漢那ダム（かんなダム）は、沖縄県国頭郡宜野座村を流れる二級河川・漢那福地川に建設された多目的ダムです。このダムは治水、灌漑、上水道への供給を主な目的とし、本ダムおよび脇ダムから構成されています。ダム湖は「かんな湖」と名付けられており、2005年には「ダム湖百選」に認定されました。建設には約350億円が投じられ、地域の水供給と災害対策に貢献しています。

ダムの目的

漢那ダムは、漢那福地川での計画高水流量200m³/sのうち130m³/sを調節することで、50年に1度の洪水に備えています。ダムの管理開始から2005年までに11回の洪水調節が行われた際、下流地域での水害は発生していません。ダム建設以前の農業用水供給も目的とされており、110ヘクタールの農地に灌漑水を提供しています。また、宜野座村内へは1日2500m³の上水を供給し、さらには流水の正常な機能を保つために0.034m³/sの流量も確保されています。特定の農地への灌漑用水供給は計画されていましたが、未完成のため未実施です。最終的に沖縄本島全域に対して1日最大11,500立方メートルの水供給を目指しています。

環境への配慮と自然再生

本ダム周辺は地域の自然環境を再生するための取り組みが行われています。開発の過程で失われたヒルギ林を復元するため、地元の小学生たちによってメヒルギやオヒルギなどの植樹が行われました。さらに、底生生物を支えるために巨礫が設置され、洪水時の避難場所も整備されています。これにより、ダム周辺の生態系が保たれ、地域の野生動物の生息地提供へと繋がっています。ダム内では多種の魚類も確認され、豊かな生物多様性が見られます。

歴史的背景

沖縄本島は戦後の経済成長を経て上水道用水の需要が高まり、水不足の問題が常に存在していました。南部は低平な地形で貯水池の設置が困難なことから、中北部の山岳エリアにダム建設が適していると判断されました。1973年から漢那福地川に対する予備調査が始まり、1982年には建設事業が着手されました。1985年から1987年にかけて本ダムの工事が進み、1993年に正式に供給が始まりました。

施設の構造

漢那ダムは本ダムと脇ダムからなり、重力式コンクリートダムが採用されています。洪水吐きは自由越流式で、流量の増加に迅速に対応できる設計となっています。また、ダムの外観は景観に配慮されており、琉球建築の要素が取り入れられた美しいデザインが特徴です。さらに、ダム下部には生物が遡上できるように魚道も設置されており、地元の生物多様性に貢献しています。

周辺の整備と活動

ダムの周囲は市民が訪れる憩いの場として整備され、年間約8万人の来場者があります。特に、毎年開催されるダムまつりには多くの方が参加し、地域の活性化にも寄与しています。湖面ではカヌーや釣りが楽しめるほか、湖畔公園は自然観察や環境教育の場としても利用されています。

このように、漢那ダムは単なる水の供給源にとどまらず、地域環境の維持や再生、そして市民の集う場としての役割を担っています。沖縄の水資源が持続可能に管理されることで、今後も地域社会に貢献し続けることでしょう。

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