濱江丸

濱江丸の歴史

濱江丸（ひんこうまる）は、1936年に大連汽船によって建造されたばら積み貨物船です。この船は、台湾や満州からの貨物輸送に使用され、当時の日本の商業活動を支えていました。しかし、太平洋戦争の勃発に伴い、日本の海軍に徴用され、特別な輸送任務を担うことになりました。

建造と設計

濱江丸は「龍江丸級貨物船」の一隻として計画され、日本の統治下にあった関東州を拠点とする大連汽船によって建造されました。このシリーズの船舶は6隻で、工事は播磨造船所に発注されました。1936年9月20日に竣工した濱江丸は、姉妹船と同様に「江」の文字が船名に含まれています。特筆すべきは、この船が日本政府からの建造費補助を受けて建造された唯一の船であり、国際情勢の悪化により、戦争に突入する前から船舶の不足が懸念されていました。

濱江丸の設計は、5000総トン級の船尾機関型で、一層構造の船倉を持っています。その船倉は、荷崩れ防止用の内壁や補強が施されており、特に鉱石運搬に適した構造とされています。また、通常貨物の運搬にも対応できるよう、換気用のベンチレーターが設置されていました。荷役設備には、デリックが付属したポストが設置され、効率的な積み降ろしが可能でした。

戦争と徴用

濱江丸は、最初は民間商船として満州産の石炭を日本本土へ運ぶ役割を果たしていましたが、1944年になると日本海軍により徴用されました。この年の4月10日、海軍省によって一般徴用船としての任務に就くことになり、マリアナ諸島方面への輸送を開始しました。実際には1944年5月中旬、濱江丸は第3515船団に参加し、館山湾からサイパン島への航海を無事に成功させました。

しかし6月11日、アメリカ軍の攻撃が迫る中、濱江丸は第4611船団に加わり日本本土への退避を開始しました。海軍の空襲による船団の壊滅が続く中、濱江丸は何とか損傷しつつも硫黄島まで到達します。その後、父島に移動中、再び空襲を受けて座礁してしまいました。

大破とその後

1944年7月4日、父島の二見湾に停泊中にアメリカ軍の空襲を受けましたが、被弾は免れました。しかし、8月4日から5日にかけて行われたスカベンジャー作戦で、濱江丸は魚雷の命中を受けて炎上し、全損となってしまいます。戦後、濱江丸の残骸は父島の境浦海岸に残され、長い間放置されることとなりました。

現在、この残骸は戦争遺跡として大切にされており、小笠原村の観光スポットの一つになっています。風化が進んでいるものの、今でもその姿は人々の記憶に留められ、多くの観光客が訪れています。戦争の歴史を物語る貴重な存在として、濱江丸はその物語を語り続けています。

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