瀬長亀次郎

瀬長亀次郎：沖縄の不屈の闘士

瀬長亀次郎（せなが かめじろう）は、1907年6月10日に沖縄県島尻郡豊見城村（現：豊見城市）で生まれ、2001年10月5日に94歳で生涯を閉じた、日本の政治家、ジャーナリストです。彼は、戦後の沖縄がアメリカの統治下にあった時代に、沖縄人民党を組織し、反米運動を主導した人物として知られています。

生い立ちと初期の活動

瀬長は、沖縄県立二中（現：沖縄県立那覇高等学校）を経て、東京の順天中学、旧制第七高等学校（現：鹿児島大学）に進学しましたが、社会主義運動に関わったことで放校処分を受けました。その後、兵役を終えた彼は横浜市鶴見区に移り、労働運動の組織化に尽力しましたが、1932年に治安維持法違反で逮捕され、3年の懲役刑を受けました。出所後は蒔絵工などをしながら過ごし、召集されて中国に出征しています。

戦後の活動と沖縄人民党

戦後、瀬長は名護町助役、沖縄朝日新聞記者、毎日新聞沖縄支局記者を経て、1946年に米軍機関紙「うるま新報」（後の琉球新報）の社長に就任しました。しかし、沖縄人民党の結成に参加したことが原因で、軍の圧力により社長を辞任することになりました。その後は雑貨店を経営しながら、沖縄人民党の書記長として活動を続けました。

米軍との対立と那覇市長時代

1950年、沖縄群島知事選挙に立候補するも落選しましたが、1952年の第1回立法院議員総選挙ではトップ当選を果たします。しかし、琉球政府創立式典での宣誓を拒否したことで、米国民政府から好ましからざる人物と見なされるようになります。

1954年、瀬長は人民党員をかくまった容疑で逮捕され、懲役2年の刑を受けました。これは、沖縄人民党事件として知られています。1956年に出所後、那覇市長選に出馬し当選。しかし、彼の当選を快く思わない米国民政府は、那覇市への補助金と融資を打ち切り、預金を凍結するなど、市政運営を妨害しました。しかし、市民が自主的に納税することで瀬長の市政を支え、米国民政府の不信任決議を退けました。その後、米国民政府は「瀬長布令」を出し、瀬長を追放し、被選挙権を剥奪しました。

国政への進出と晩年

1967年に瀬長布令が廃止されたことで被選挙権を回復し、1968年の第8回立法院議員選挙で議席を取り戻しました。1970年の沖縄初の国政参加選挙では、沖縄人民党公認で当選。1972年の第33回衆議院議員総選挙でも再選を果たしました。1973年に沖縄人民党が日本共産党と合流してからは、日本共産党公認として1986年まで衆議院議員を7期連続で務め、その間、日本共産党副委員長も務めました。1990年に政界を引退し、2001年に94歳で亡くなりました。

瀬長亀次郎の功績と遺産

瀬長亀次郎は、その生涯を通じて、沖縄の復帰と平和を強く求めました。彼の反米闘争は、多くの沖縄県民に勇気を与え、祖国復帰運動を推し進める原動力となりました。また、那覇市長時代には、市民との信頼関係を築き、困難な状況の中でも市政を運営しました。その不屈の精神と行動力は、現在でも多くの人々に尊敬されています。

受賞と顕彰

ジュリオ=キュリー賞
那覇市政功労賞
県自治功労賞
沖縄タイムス賞（自治賞）
那覇名誉市民
豊見城名誉村民

関連作品

映画『カメジロー 沖縄の青春』（1998年）
小林よしのり著『沖縄論』所収「亀次郎の戦い」（2005年）

記念館

不屈館（2013年開館）

主な著書

『不屈 : 瀬長亀次郎日記』
『沖縄からの報告』
『沖縄人民党 : 闘いの二十五年』
『民族の怒り : もえあがる沖縄』
『民族の悲劇 : 沖縄県民の抵抗』
『民族の未来 : 沖縄に平和と文化を』
『瀬長亀次郎回想録』



瀬長亀次郎の生涯は、沖縄の歴史と深く結びついており、彼の不屈の精神は、今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

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