火事場のクソ力

火事場のクソ力：キン肉マンを象徴する超能力

「火事場のクソ力」は、ゆでたまご作の漫画『キン肉マン』シリーズに登場する、作中人物が極限状態に陥った際に発揮する潜在能力です。特に主人公キン肉マンやその一族に顕著に見られ、通常では考えられないほどのパワーを発揮します。

『キン肉マン』での初登場と発展

この能力が初めて「火事場のクソ力」という言葉で表現されたのは、超人オリンピック編でのキン肉マンの優勝直後でした。ラーメンマンが、ロビンマスクの必殺技で意識を失っていたキン肉マンが、無意識に放った逆転技を目の当たりにし、「火事場のクソ力」と評しました。彼はこの力を「自己防衛本能」「戦う超人にとって最も大切な野生の本能」と説明しました。

この出来事をきっかけに、キン肉マンは火事場のクソ力を駆使して強敵たちを次々と打ち破り、「奇跡の逆転ファイター」と呼ばれるようになりました。キン肉マンの火事場のクソ力は、闘いの中で成長を続け、超人強度の原則を覆すほどに強大化し、最高値である1億パワーに達する勢いを見せました。このキン肉マンの力を危険視した邪悪五神が、王位継承を阻止しようとしたのが、「キン肉星王位争奪編」の始まりです。

火事場のクソ力は、キン肉マンだけが持つ能力ではありません。ウォーズマンがキン肉マンとの戦いで学んだ火事場のクソ力を発揮したり、アシュラマンが悪魔超人版の「魔界のクソ力」を使用したりしています。また、ミートもミキサー大帝戦で独自の「ミート式火事場のクソ力」を使い、キン肉マンの兄・アタルは「業火のクソ力」という、火事場のクソ力の原型とも言える力を使用しています。

新シリーズにおける火事場のクソ力

新シリーズ「完璧超人始祖編」では、火事場のクソ力と友情パワーが同一のものであるとされています。キン肉マンが友情パワーを拡散することで、火事場のクソ力も同時に広まり、超人たちの闘争本能を刺激すると、完璧超人軍は危惧しました。その結果、キン肉マンとその影響を受けた超人を殲滅する計画が始動します。

バッファローマンが仲間を侮辱された怒りから、本来の力を遥かに超える8000万パワーを発揮した例からも、キン肉マンとの戦いを通じて友情を知った超人たちが、火事場のクソ力に目覚めていることがわかります。このシリーズから、火事場のクソ力発動時に体が発光する現象も描かれるようになりました。

友情パワーの源泉は、敵をも救う「慈悲の心」にあるとされ、悪魔将軍も師であるザ・マンへの使命感から友情パワーを発揮します。「オメガ・ケンタウリの六鎗客編」では、火事場のクソ力の発露には3つの段階があるとされました。一段階目は「己のために出す力」、二段階目は「友のために出す力」、そして三段階目は「敵のために出す力」です。この三段階目の力が、キン肉マンが敵であるオメガの民を救う決意によって発揮されたことで、パイレートマンを打ち破る要因となりました。

また、「恨み」や「憎しみ」といった感情は火事場のクソ力と相性が悪く、そういった感情を込めて発動しても、一時的に超人強度は高まるものの、すぐに弱体化することが示唆されています。

『キン肉マンII世』におけるK・K・D

続編の『キン肉マンII世』では、「火事場のクソ力」は「K・K・D（Kajibano Kuso Dikara）」と省略表記され、「キン肉族にだけ与えられた神秘の力」と設定されました。主人公であるキン肉マンの息子・万太郎は、未熟な「たき火のクソ力」で戦っていましたが、肉体が限界に達したため、「K・K・D修練（火事場のクソ力チャレンジ）」で完全なクソ力を習得する必要がありました。

火事場のクソ力の三大要素は「寛容」「無我」「友情」とされ、これらの対極にある「強欲」「残虐」「非道」から成る「墓場のクソ力」を持つノーリスペクトとの戦いを通じて、万太郎は火事場のクソ力を身につけました。

また、火事場のクソ力の強さを炎の大きさで計測する「魂のランタン」が登場し、キン肉マンやアタルの他に、万太郎の祖父である真弓も大きな炎を灯しています。

キン肉族特有の力とされた火事場のクソ力ですが、ロビンマスクの息子ケビンマスクは、火事場のクソ力に似た「大渦（メイルストローム）パワー」を持ち、万太郎との決勝戦で激突しました。どちらの力も発動時には「発光現象」が伴います。

その他の情報

火事場のクソ力は、ゲームシステムとしても取り入れられており、ピンチの際にキャラクターを強化する要素として機能しています。また、バッファローマン対ウォーズマン戦では、火事場のクソ力は「相手のパワーを逆用する技」と解説され、プリンス・カメハメのテーマソングでは、悪を憎む心とへこたれない根性が発揮の条件として挙げられています。

『キン肉マン 77の謎』では、超人強度100万パワー以下の正義超人が、強敵と互角に戦えるのは火事場のクソ力によるものと解釈されています。また、現実世界の「火事場の馬鹿力」との関連性も示唆されており、人間にも備わっている能力であると示されています。

学研の図鑑『キン肉マン「超人」』では、ロビン一族の「大渦パワー」、悪魔将軍の「ロンズデーライトパワー」も火事場のクソ力と同義であると解説されています。

「火事場のクソ力」は、キン肉マンシリーズを語る上で欠かせない要素であり、キャラクターたちの成長や物語の展開に深く関わる重要な能力です。

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