火星 (エンジン)

火星エンジンの概要

火星（かせい）は、第二次世界大戦中に三菱重工業によって開発された航空機用の空冷星型エンジンです。このエンジンは日本の航空戦力において重要な役割を果たし、特に陸海軍の多くの航空機に使用されました。

開発の背景

火星エンジンの基礎は、金星エンジンに置かれています。1938年2月、金星の出力が大型機に対して不足していることが判明し、その改良が急務となりました。そこで、三菱重工業は金星を元にし、更に大排気量なエンジンの開発を始めました。この新しいエンジンは、海軍のモデルとして「十三試」と呼ばれ、1935年に始まった一〇試空冷八〇〇馬力発動機の原型が用いられました。

技術的特性

火星エンジンは、基本的に金星エンジンの設計を踏襲していますが、いくつかの重要な改善が施されました。気筒径は150mm、行程長は170mmで、これまでのイスパノ650馬力発動機と同寸法を保ちながらも、過給機は2速化され、高高度での性能向上が図られています。このエンジンは、1940年に陸海軍に制式採用され、初号機は1938年9月に完成しました。

バリエーションと生産

火星エンジンにはいくつかの異なる型式があり、各型式は特定の用途や性能向上を目指して改造されました。例えば、火星一一型は最初の量産型として1940年に生産が開始され、その後火星一二型へ移行しました。火星一二型では出力軸の減速装置が変更され、さらなる性能向上が見込まれました。

1941年には火星二◯型が登場し、水メタノール噴射装置を搭載して高回転数と高ブースト圧を実現しました。このような改良により、火星エンジンはもはや自社の機体だけでなく、他の航空機にも広く採用されることとなりました。火星一〇型/ハ101の生産は1938年から1944年までの間に7,332基が製造され、火星二〇型/ハ111の生産は1941年から1945年にかけて合計8,569基に達しました。

主な搭載機

火星エンジンは、さまざまな航空機に搭載されました。主な機体には、九七式重爆撃機、一式陸上攻撃機、二式飛行艇、天山、一二型以降の雷電、強風、銀河などが含まれます。これにより、火星エンジンは日本航空機産業の中で重要なエンジンの一つとして位置づけられることになります。

まとめ

火星エンジンは、その高出力と信頼性から、多くの航空機に採用されただけでなく、日本の航空技術における重要な進展を象徴する存在となりました。その歴史と特性を知ることで、当時の航空技術の進化に対する理解が深まります。エンジン開発の過程やその影響は、今なお航空技術の発展において重要な考察材料となるでしょう。

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