炎の天使 (オペラ)

オペラ「炎の天使」について

セルゲイ・プロコフィエフが作曲したオペラ「炎の天使」（原題：Огненный ангел）は、全5幕から構成される作品で、彼の4番目のオペラにあたります。かつては「火の天使」と表記されることもありました。

概要

1919年に作曲が開始され、1927年にフランスで完成しました。台本は、ワレリー・ブリューソフが1908年に発表した同名小説を基に、プロコフィエフ自身が作成しました。

作曲者の生前には初演されることはなく、1928年6月14日にパリでセルゲイ・クーセヴィツキーの指揮により、一部が演奏会形式で初演されたのみでした。全曲が初演されたのは、プロコフィエフの死後の1954年11月25日、シャルル・ブリュック指揮パリ放送交響楽団とルネ・アリス合唱団によって演奏会形式で行われました。翌年には、フェニーチェ劇場で舞台初演が実現しました。

生前には初演されなかったため、プロコフィエフは1928年にこの作品の主題を流用して交響曲第3番を作曲しています。プロコフィエフは、マディエルとハインリヒを「炎の天使」として印象付けるために、あえて声楽を入れない構成にしたとされています。

楽器編成

このオペラは、以下の楽器編成で演奏されます。

木管楽器: ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ2
打楽器: ティンパニ、小太鼓、大太鼓、タンブリン、鐘、シンバル、トライアングル、カスタネット
その他: 弦五部、ハープ2

演奏時間は約1時間55分から2時間です。

登場人物

レナータ：若い女性。かつて「炎の天使」マディエリと過ごした過去を持つ
ルプレヒト：アメリカ帰りの騎士。レナータに恋をする
ハインリッヒ伯爵：レナータがマディエリの生まれ変わりと信じる人物
宿屋の女将
占い師
本屋のヤコブ・グロク
アグリッパ・フォン・ネッテスハイム：魔術師、学者
ヴィスマン：ルプレヒトの友人
ファウスト
メフィストフェレス
尼僧院長
宗教裁判長
その他（合唱）：3つの骸骨、3人の隣人、2人の若い修道女、6人の修道女、異端審問官の随員、修道女たち、男声・女声合唱（舞台裏）

あらすじ

時は1543年、舞台はドイツのライン地方。

第1幕

宿屋の屋根裏部屋。ルプレヒトは、宿屋の女将に案内された部屋で、隣室から聞こえる叫び声に気づきます。そこには「悪霊に取り憑かれている」と苦しむ若い女性レナータがいました。レナータは、かつて「炎の天使」マディエリと過ごしたこと、そしてハインリッヒ伯爵がその生まれ変わりだと信じて恋に落ちたが、捨てられた過去を語ります。ルプレヒトはレナータの魅力に惹かれ、彼女を守ることを決意します。占い師は二人の血塗られた運命を予言し、ルプレヒトはレナータを連れて宿を逃げ出します。

第2幕

ケルンに到着したルプレヒトとレナータ。レナータは、ハインリッヒ伯爵を探すために魔術を研究しています。ルプレヒトは再び愛を告白しますが拒絶されます。本屋のヤコブ・グロクが魔術書を持ってきますが、魔術は成功しません。ルプレヒトは魔術師アグリッパ・フォン・ネッテスハイムに助言を求めますが断られます。

第3幕

レナータは偶然にもケルンでハインリッヒ伯爵と再会しますが、伯爵は彼女を魔女と呼び、屋敷に入らせようとしません。傷ついたレナータは、ルプレヒトに伯爵との決闘を依頼しますが、決闘直前になり、伯爵がマディエリの生まれ変わりであると確信し、決闘を止めさせます。ルプレヒトは決闘で深手を負いますが、命は助かります。

第4幕

ルプレヒトは回復し、レナータとの結婚を望みますが、レナータはルプレヒトを愛することはできず、自らの肉体を呪います。混乱したレナータはルプレヒトを悪魔の使いと責め、ナイフで自傷行為を繰り返した後、逃亡します。その様子を、ファウストとメフィストフェレスが居酒屋で見ています。メフィストフェレスはルプレヒトに興味を持ち、一緒に酒を飲もうと誘います。

第5幕

レナータは修道院に逃げ込みますが、悪霊に苦しめられ、修道院は不穏な空気に包まれます。宗教裁判にかけられたレナータは悪魔払いの儀式を受けますが、事態は悪化し、修道女たちは悪魔を讃美し始めます。メフィストフェレスはレナータを救おうとするルプレヒトを阻止し、レナータは火あぶりの刑を宣告され、物語は幕を閉じます。

参考資料

『作曲家別名曲解説ライブラリー20 プロコフィエフ』（音楽之友社）
『新グローブ オペラ事典』（白水社、スタンリー・セイデイ著）

外部リンク

炎の天使の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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