炭そ病

炭そ病（炭疽病）

炭そ病、または炭疽病は、主に糸状菌のColletotrichum属によって引き起こされる植物病害です。この病気は、暗褐色や黒色の瘡蓋や潰瘍状の病斑が特徴的です。多くの植物、特に果樹や野菜、芝草に広く影響を及ぼし、特に亜熱帯や熱帯地域で重篤な被害を引き起こします。日本国内では約320種の植物が宿主として報告されており、その多くの植物に対して異なる病原菌が関与しています。

種類と影響

炭そ病は広葉樹や草花、野菜類、果樹類など、さまざまな植物に影響を与えます。特にマンゴーやバナナ、トウモロコシといった重要な作物への影響が大きいです。Colletotrichum属の植物炭疽菌は人間や動物には感染しないため、農業における問題に特化していますが、発病した部位が人獣共通感染症の炭疽症を思わせることから、名称が付けられています。

病原菌の分類と特徴

炭そ病を引き起こすColletotrichum属菌は、これまでに38種以上と8つの変種が確認されていますが、最近の研究によって再分類される傾向にあります。これまでの分類は、分生子や菌糸の成長速度に基づいていましたが、新しい分子系統解析によって、より正確な分類が進んでいます。特にColletotrichum属とGlomerella属の関係も見直されており、これまで異なっていた学名が統一されつつあります。

発症のメカニズムと症状

炭そ病は特に気温が25度前後で活発に発生し、春から秋にかけて菌の活動が盛んになります。雨滴による伝染が主な感染経路であり、長雨や湿気の多い環境が発病を助長します。症状は植物の様々な部位に現れ、葉や茎、果実に病斑が形成されます。これらの部位にできる病斑は、くぼみができ、同心円状の輪紋を伴うことが多いです。特に高湿度条件では、病斑部に鮭肉色の分生子塊が見られることもあります。

防除方法

炭そ病の防除では、まず病原菌の密度を下げ、発生しにくい環境を整えることが基本です。薬剤防除も必須となりますが、特に果樹栽培では前年に病気が発生した枝を剪定することが重要です。イチゴや野菜類では、栽培設備の消毒や水跳ね防止のための異なる灌水方法を採用することで、感染を防ぐことが求められます。また、使用する薬剤については、耐性菌に対する注意が必要で、徐々に新たな病原菌や病害についての報告も増えているため、情報の更新が不可欠です。

その他の病原

カタログされた炭そ病には、Colletotrichum属菌以外のもの、例えばサボテン炭そ病（Microdochium lunatum）やスズカケノキ炭そ病（Discula platani）なども存在します。これらと炭疽病の違いを理解し、適切な対策を講じることが求められます。

最後に、炭そ病の管理は特に注意が必要であり、今後も新たな病原菌の発見が期待されるため、農業関係者は最新の情報を追い続けることが重要です。

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