炭疽症

炭疽症（たんそしょう）

炭疽症は、炭疽菌によって引き起こされる感染症です。この病気は主に家畜、特にヒツジやヤギ、その他の野生動物に影響を与えますが、人間にも感染する可能性があるため、注意が必要です。炭疽症は「人獣共通[[感染症]]」とも呼ばれ、ヒトは感染した動物との接触や、その肉や毛皮を通じて感染します。ただし、ヒトからヒトへの感染はなく、非常に危険ではあるものの、伝染病ではありません。

特徴と歴史

炭疽という名称は、「炭のかさぶた」を意味し、英語の「Anthrax」もギリシャ語で「炭」を指します。この名称は、皮膚炭疽の症状で見られる黒いかさぶたに由来しています。炭疽菌は高い致死率を持つため、感染経路によってはエボラ出血熱やペストと肩を並べる危険度を誇ります。

炭疽症の種類

炭疽症には主に以下の3つのタイプがあります。

1. 皮膚炭疽症

皮膚を通じて感染が起こると、通常1〜7日以内にニキビのような小さな丘疹が現れます。この丘疹は無痛性または軽いかゆみを伴い、周囲には発疹と浮腫が見られます。丘疹は潰瘍になり、黒いかさぶたを形成することが多く、伴って高熱が出ます。この形態の炭疽症が最も一般的で、未治療の場合の致死率は約10〜20%です。

2. 肺炭疽症

空気中の炭疽菌を吸入することで発症します。インフルエンザのような症状が現れ、高熱、咳、膿や血が混じった痰、呼吸困難が伴います。未治療の場合の致死率は90%以上と非常に高く、迅速な医療対応が求められます。

3. 腸炭疽症

感染した食物を摂取することで発症し、頸部リンパ節炎、激しい腹痛、高熱、吐血、下痢といった症状が見られます。この場合、未治療の致死率は25〜50%とされ、早急な医療介入が重要です。

予防と治療

予防

家畜が炭疽症にかかった場合は速やかに殺処分し、感染源となる汚染物は焼却または消毒が推奨されます。また、原因不明の病気にかかった家畜の肉は避けるべきです。日本では炭疽のワクチンは存在しないため、アメリカで製造されているワクチンが必要とされていますが、接種回数が多く副作用のリスクがあるため、予防接種は一般的には行われません。

緊急時には、消毒剤としてヨウ素や塩素などを利用し、汚染箇所に散布します。さらに、殺菌用紫外線放射装置を使用することも可能です。

治療

感染した場合、抗生物質（ペニシリンやテトラサイクリンなど）が有効とされています。ヒトからヒトへの感染がないため、隔離の必要はありません。適切なタイミングで治療を受ければ、高い治癒率が期待できます。

発症例

日本での著名な発症例は1965年に岩[[手県]]での乳牛の炭疽病でした。この牛は、一度埋められた後に掘り起こされ、肉が販売されたため、牛肉を食べた33人が下痢や腹痛を訴えました。また、2016年にはロシアのシベリア地方で炭疽が広がり、70年前のトナカイの遺体から感染が確認されました。

炭疽菌の性質

炭疽菌は、ヒトや家畜に対して高い致死率と感染力を持っています。培養が容易で、芽胞状態では長期間生存する特性があります。一部地域では生物兵器としても利用されたことがあり、特に旧ソ連では大量生産された経緯があります。近年では、アメリカでの炭疽菌事件などが世界中で問題視されています。

費用

診断と治療に関しては、抗生物質の使用が主流ですが、炭疽症の兆候が現れた際は早めに専門医を訪れることが重要です。

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