炭酸ストロンチウム

炭酸ストロンチウム：性質、製法、用途

炭酸[ストロンチウム]は、ストロンチウムの炭酸塩であり、様々な産業において重要な役割を果たす化合物です。ブラウン管やフェライト磁石の製造など、幅広い用途に使用されています。その名称の由来は、ストロンチウムの元素名が、炭酸ストロンチウムが最初に発見されたイギリスの町、ストロンティーアン(Strontian)にちなむことからも分かります。

製法

炭酸[ストロンチウム]]は、主に天然のセレスタイト鉱石から製造されます。セレスタイトは硫酸ストロンチウム]を主成分とする鉱物です。まず、選鉱によって高純度のセレスタイトを抽出します。その後、可溶性[[ストロンチウム塩の水溶液に炭酸塩を加えるか、あるいは水酸化ストロンチウムの水溶液に二酸化炭素を吹き込むことで、炭酸ストロンチウムの沈殿が生成されます。この沈殿をろ過、洗浄、乾燥することで、精製された炭酸ストロンチウムが得られます。化学反応式は以下の通りです。

Sr(OH)₂ + CO₂ → SrCO₃ + H₂O

物理的性質

炭酸ストロンチウムは無色結晶で、直方晶(斜方晶)系の霰石型構造をしています。その格子定数は、a=842pm、b=610pm、c=513pmと測定されています。また、屈折率は三軸不等性を示し、c軸方向で1.516、a軸方向で1.644、b軸方向で1.666という値を示します。アルカリ土類金属の炭酸塩の中では水に対する溶解度が最も低く、その溶解度積(Ksp)は7.0×10⁻¹⁰と非常に小さい値を示します。

化学的性質

炭酸ストロンチウムは、二酸化炭素を含む水に溶解し、炭酸水素ストロンチウムを生成します。この反応は可逆反応であり、二酸化炭素分圧の変化によって平衡が移動します。

SrCO₃ + CO₂ + H₂O ⇄ Sr²⁺(aq) + 2HCO₃⁻(aq)

また、希酸には容易に溶解し、二酸化炭素を発生させます。例えば、塩酸との反応は次のようになります。

SrCO₃ + 2HCl → SrCl₂ + CO₂ + H₂O

高温では分解して酸化[ストロンチウム]と[二酸化炭素]に分解しますが、炭酸カルシウムに比べて分解しにくい性質を持っています。二酸化炭素の解離圧が1気圧になる温度は約1250℃です。

SrCO₃ → SrO + CO₂

用途

炭酸ストロンチウムは、その特性を生かして様々な用途に用いられています。特に重要な用途としては、ブラウン管、カラーテレビの蛍光体、フェライト磁石の原料として挙げられます。近年では、セラミックスや触媒の原料としても注目されています。

安全性

炭酸ストロンチウム自体は、比較的毒性の低い物質とされていますが、取り扱いにおいては、粉じんの吸入を避け、適切な保護具を着用する必要があります。また、廃棄の際には、環境への影響を考慮し、適切な方法で行う必要があります。詳細な安全性情報については、国際化学物質安全性カード(ICSC)を参照することをお勧めします。

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