炭酸水素塩

炭酸水素塩（重炭酸塩）とは？

炭酸水素塩、または重炭酸塩とは、炭酸水素イオン(HCO₃⁻)を含む水素塩の一種です。これは、炭酸が一部だけ電離した際に生じるイオンを含む化合物です。リチウム以外のアルカリ金属、カドミウム、アンモニウムなどの炭酸水素塩は、結晶として単離することができます。しかし、アルカリ土類金属などの炭酸水素塩は、それらの炭酸塩と二酸化炭素を反応させた水溶液中でしか存在せず、固体としては単離できません。

これらの炭酸水素塩は、熱に不安定な性質を持っています。アルカリ金属の炭酸水素塩であっても、水溶液を加熱したり、固体を約200℃に加熱すると分解して炭酸塩になります。この分解反応は、以下の化学式で表すことができます。

2NaHCO₃ → Δ → Na₂CO₃ + CO₂ + H₂O

この式は、[炭酸]]水素ナトリウム(NaHCO₃)が加熱されると、炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)、[[二酸化炭素]、水(H₂O)に分解されることを示しています。Δは加熱を意味します。

炭酸水素イオン：生体内での役割

炭酸水素イオン(HCO₃⁻)は、炭酸が水中で電離する際に生成する陰イオンです。このイオンは、重炭酸イオンと呼ばれることもあります。炭酸水素イオンは、天然には硬水や海水中などに比較的多く含まれています。例えば、海水中には0.14g/dm³、0.0023mol/dm³の濃度で存在しています。

生体内においても、炭酸水素イオンは重要な役割を果たしています。体内で生成された二酸化炭素は、炭酸脱水酵素という酵素の働きによって、速やかに炭酸水素イオンと水素イオンに変化します。そして、この炭酸水素イオンは、血液によって肺に運ばれ、再び二酸化炭素として排出されます。この一連のプロセスは、体内のpHを一定に保つ上で重要な役割を果たしています。

主な炭酸水素塩

様々な金属の炭酸水素塩が存在しますが、代表的なものを以下に挙げます。

炭酸水素アンモニウム (NH₄HCO₃): 主に肥料などに使用されます。
炭酸水素カリウム (KHCO₃): 重炭酸カリとも呼ばれ、食品添加物や医薬品などに用いられます。
炭酸水素カルシウム (Ca(HCO₃)₂): 硬水中に存在し、水の硬度に関与しています。
炭酸水素ナトリウム (NaHCO₃): 重曹、重炭酸ソーダとも呼ばれ、最も身近な炭酸水素塩の一つです。ベーキングパウダーの膨張剤、制酸剤、洗浄剤など、様々な用途で使用されています。また、入浴剤としても広く利用されています。

これらの炭酸水素塩は、それぞれ異なる性質と用途を持ち、私たちの生活に深く関わっています。

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