炳霊寺石窟

炳霊寺石窟（へいれいじせっくつ）

炳霊寺石窟は、中華人民共和国の甘粛省にある仏教石窟で、黄河沿いの美しい渓谷に位置しています。蘭州から南東へ約100キロほどの場所、劉家峡水力発電所の北岸に広がるこの石窟群は、自然に形成された洞窟とその中に彫刻された仏像から成り立っています。炳霊寺は「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」の一部として、世界遺産にも登録されており、2020年には中国の5A級観光地に認定されました。

この石窟群は1000年以上もの長い間開かれており、最初の岩屋は西秦末期の420年ごろに造られました。以降、北魏、北周、隋、唐、宋、元、明、清の各王朝によって、石窟は拡張され続けてきました。その中には、歴史的な逸話を持つ楊貴妃に似せて作られたとされる仏像も存在します。また、各石窟内の様式は、王朝ごとに異なる美術様式と密接に関連しており、観光客にとって貴重な文化的体験を提供しています。

炳霊寺は、地理的にも様式的にもアフガニスタンのバーミヤンの石仏群や、中国中央部の石窟寺院群、大同近くの雲崗石窟、洛陽近くの龍門石窟の中間に位置しており、その存在感は歴史的に重要と言えます。

「炳霊」という名称はチベット語で「十万仏」を意味しますが、過去数世紀にわたって、この石窟群は地震や浸食、さらには略奪者の影響を受け、多くの貴重な芸術作品が損なわれてきました。現在、残されているのは183の石窟、694体の石像、82の粘土彫刻です。これらはシルクロードを経由して行き交う人々による寄付が元となっています。

石窟内には仏像や色彩豊かなフレスコ画が施されており、その美しさは多くの観光客を魅了しています。峡谷の北側には約200メートルにわたって並ぶ石窟群が広がっており、各石窟は数々の仏像が安置された小さな寺院のような存在となっています。特に目を引くのは、高さ27メートル以上もある巨大な弥勒菩薩像で、自然の洞窟の中に壮麗に誕生しています。この彫像に向かう木製の歩道は不安定に岩面に固定されており、訪れる人々に冒険心をそそります。

観光の魅力

炳霊寺石窟は、その歴史的な価値と美術的な魅力から、多くの観光客を惹きつけています。周囲は都市から隔絶された僻地に位置しており、以前は陸路が整備されていなかったため、主に夏と秋の間に水力発電所を経由して進む船によるアクセスが一般的でした。船は劉家峡ダム付近から出港し、ダム内の他の港からも運行されることがありますが、現在では陸路も整備されており、バスが運行されています。そのため、より簡単に訪れることが可能となっています。

この場所は、仏教美術の素晴らしさを体感することができる貴重な観光地であり、訪れる人々に深い感動を与えています。

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