烏累若鞮単于

烏累若鞮単于（？ - 18年）

烏累若鞮単于（うるにゃくたいぜんう、おりゅうじゃくていせんう、Wūlèiruòdīchányú）は、中国の新朝時代に存在した匈奴の単于です。彼は呼韓邪単于と第二閼氏（大閼氏）の間に生まれ、烏珠留若鞮単于の異母弟にあたります。烏累若鞮単于は称号であり、姓は攣鞮氏、名は咸（かん）といいます。

生涯

即位まで

咸は、呼韓邪単于とその第二夫人である大閼氏との間に生まれました。彼には異母兄である且莫車（後の車牙若鞮単于）や、同母兄である雕陶莫皋・且麋胥がいました。また、異母弟の楽もいました。

呼韓邪単于の死後、後継者争いが起こりましたが、最終的に年功序列で単于位を継承することが決まり、咸の同母兄である雕陶莫皋が復株累若鞮単于として即位しました。その後、且麋胥、且莫車と咸の異母兄弟が単于となりました。

新朝との関係

9年、王莽が漢を滅ぼして新を建国すると、烏珠留若鞮単于に新たな単于印を与えました。王莽は匈奴に様々な要求を突きつけ、両者の関係は悪化しました。烏珠留若鞮単于は、王莽が与えた印を漢の時代の文字に戻さなかったために、辺境の郡を攻め、役人や民衆を殺害・略奪しました。

王莽は匈奴討伐を決意し、30万の軍を派遣しました。また、匈奴を15に分割しようと企てました。

孝単于として擁立、そして逃亡

11年、王莽は匈奴を分裂させるため、咸を孝単于に立てました。しかし、咸は新から逃亡し、烏珠留若鞮単于の元へ帰還しました。

単于即位

13年、烏珠留若鞮単于が死去すると、咸は烏累若鞮単于として単于に即位しました。彼は即位後、新との和親を図りました。

新との再度の対立

烏累若鞮単于は新との和親を模索しましたが、王莽が彼の息子である登を処刑したことで激怒し、再び新との交戦を開始しました。

王莽の世界観

王莽は独特の世界観を持っており、夷狄を含むすべての地域を「大一統」すべきだと考えていました。彼は『周礼』の概念を拡大解釈し、理想的な帝国を築こうとしました。

和親と裏切り

烏累若鞮単于は、表面的には王莽に従う姿勢を見せましたが、実際には侵略を続け、利益を得ていました。彼は王莽から贈られた財貨を受け取りながらも、新への寇盗を繰り返しました。

死去

18年、烏累若鞮単于は死去し、弟の呼都而尸道皋若鞮単于が後を継ぎました。

烏累若鞮単于のその後

烏累若鞮単于の死後も、匈奴と新の関係は悪化の一途を辿りました。王莽の新王朝は短命に終わり、中国は再び混乱の時代へと突入しました。烏累若鞮単于の生涯は、匈奴と漢（新）という二つの勢力の狭間で翻弄された時代の縮図とも言えるでしょう。

子

順単于 (助)
順単于 (登)

脚注

東晋次『王莽―儒家の理想に憑かれた男』（白帝社アジア史選書）、白帝社 、2003.10
渡邉義浩『王莽―改革者の孤独』（あじあブックス）、大修館書店、2012.12

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