無オーガズム症

無オーガズム症（Anorgasmia）とは

無オーガズム症とは、十分な性的刺激があるにもかかわらず、オーガズムを経験できない状態を指します。この症状は、性機能障害の一種として分類され、女性に多く見られる傾向があります。男性に比べて女性の有病率が高く、特に若い男性には稀です。また、閉経後の女性においてより深刻化するケースも報告されています。

原因

無オーガズム症の原因は多岐にわたり、精神的な要因と身体的な要因が複雑に絡み合っている場合があります。

精神的な要因: 過去の性的トラウマ、性的抑圧、ストレス、不安などが挙げられます。
身体的な要因:
糖尿病性神経障害、多発性硬化症、パーキンソン病などの神経系の疾患
性器切除や性器手術の合併症、骨盤外傷
ホルモンバランスの乱れ
子宮全摘出術
脊髄損傷、馬尾症候群
子宮動脈塞栓術
分娩時外傷
外陰部痛
心血管疾患

薬剤性無オーガズム症

特定の薬剤の使用も無オーガズム症を引き起こす可能性があります。特に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬（SSRI）などの抗うつ薬は、性機能障害の副作用として無オーガズム症を引き起こすことが知られています。その他、コカインやヘロインなどの薬物依存も原因となることがあります。

無オーガズム症の種類

無オーガズム症は、その発症時期や原因によっていくつかの種類に分類されます。

一次性無オーガズム症: 生涯に一度もオーガズムを経験したことがない状態を指します。女性に多く見られますが、男性にも起こりえます。性的興奮レベルが低い場合や、オーガズムが得られない明らかな理由がない場合もあります。
二次性無オーガズム症: 以前はオーガズムを経験していたにもかかわらず、その後オーガズムを感じられなくなった状態を指します。アルコール依存症、うつ病、悲嘆、骨盤の手術や外傷、特定の薬物、不摂生、閉経に伴うエストロゲンの欠乏、強姦、男性のマスターベーション依存症などが原因として考えられます。
状況性無オーガズム症: 特定の状況下でのみオーガズムを感じられない状態を指します。例えば、あるタイプの刺激ではオーガズムを感じるが、別の刺激では感じない、あるパートナーとはオーガズムを感じるが、別のパートナーとは感じないといったケースがあります。これは正常な性的表現の範囲内であり、必ずしも問題視する必要はありません。

診断

無オーガズム症の診断には、詳細な問診と身体検査が必要です。問診では、性的経験、既往歴、服用薬、生活習慣などについて詳しく尋ねられます。身体検査では、性器の状態や神経学的検査が行われることがあります。また、血液検査を行い、ホルモンバランスの乱れやその他の疾患がないかを確認します。

治療

無オーガズム症の治療は、原因によって異なります。心理的な要因が強い場合は、心理カウンセリングや性療法が有効です。身体的な疾患が原因の場合は、その疾患の治療を行います。また、薬物療法も選択肢の一つです。

心理療法: 過去の性的トラウマや性的抑圧を取り除き、性的自己肯定感を高めることを目指します。
薬物療法: ホルモン補充療法や、血流を改善する薬、性的感覚を高める薬などが用いられます。SSRIによる無オーガズム症に対しては、シルデナフィルなどのPDE5阻害薬が有効な場合があります。

その他

無オーガズム症は、適切な診断と治療によって改善が期待できる症状です。悩まずに専門医に相談することが大切です。また、パートナーとのコミュニケーションを深め、互いの性的ニーズを理解することも重要です。

関連項目

オーガズム痛
性快感消失症

もう一度検索