無声歯茎硬口蓋破擦音

無声歯茎硬口蓋破擦音（むせいしけいこうこうがいはさつおん）は、子音の種類の一つであり、発音の際に独特な調音方法を伴います。この音は、舌の先端を下歯茎に接触させた状態で、舌の盛り上がった部分（舌端）と歯茎から硬口蓋にかけての範囲で一旦閉鎖を作り、その後ゆっくりと開放することで生じる摩擦音です。

調音の特徴

この子音の調音には、いくつかの特徴的な要素があります。

1. 気流の起こし手：肺からの呼気を利用します。つまり、息を吐き出すことで音が生成されます。
2. 発声：声帯の振動を伴わない無声音です。これにより、濁りのないクリアな音色になります。
3. 調音位置：舌端と歯茎、そして硬口蓋が調音に関わる歯茎硬口蓋音です。舌の先端と硬口蓋の間の特定の場所で音が作られます。
4. 調音方法：まず、口腔内で完全な閉鎖を作り、その後、ゆっくりと開放することで摩擦が生じる破擦音です。破裂音のような閉鎖音と、摩擦音の両方の特徴を併せ持っています。
5. 口腔内の気流：舌の中央部分を気流が通る中線音です。
6. 口蓋帆の位置：口蓋帆を持ち上げて鼻腔への通路を塞ぐことで、口腔のみから発音される口音です。

国際音声記号

国際音声記号（IPA）では、この音は [t͡ɕ] のように、二つの記号をタイ（連結記号）で結んで表記します。かつては [ʨ] という合字で表記されることもありましたが、現在では[t͡ɕ]が一般的です。また、略記として[tɕ]と表記されることもあります。

各言語での例

無声歯茎硬口蓋破擦音は、様々な言語に存在し、それぞれ異なる文字で表現されます。

日本語: 「茶（ちゃ）」[t͡ɕa] のように、「ち、ちゃ、ちゅ、ちょ」の子音として現れます。
ロシア語: ч がこの音を表します。
ポーランド語: ci-（例：ciastko [ˈt͡ɕastko] 「菓子」）、ć（例：słuchać [ˈswuxat͡ɕ] 「聞く」）などでこの音を表します。
中国語: ピンインの j（例：ㄐ）や q（例：ㄑ）で表されます。後者は有気音 [ʨʰ] となります。
チベット語: ཅ (ca) 、ཆ, ཇ (cha) などで表され、後者は有気音 [ʨʰ] です。
タイ語: จ (cと表記されます)、ฉ、ช、ฌ (ch) などで表され、後者は有気音 [ʨʰ] です。
朝鮮語: 잠 [t͡ɕam] （眠り、韓国標準発音）のように、いくつかの単語に現れます。

関連事項

この音に関連する項目として、以下のものがあります。

有声歯茎硬口蓋破擦音：声帯の振動を伴う有声音版。
子音：無声歯茎硬口蓋破擦音も属する音の種類。
国際音声記号：音声の表記に使われる記号体系。

無声歯茎硬口蓋破擦音は、世界の多くの言語に見られる子音であり、その調音方法と音響的な特徴は、言語学や音声学の研究において重要な役割を果たしています。異なる言語でのこの音の具体的な現れ方を比較することで、言語の多様性を理解する上で役立ちます。

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