無水酢酸

無水酢酸：性質、製造、用途、および規制

無水酢酸は、酢酸から水分子を除去して得られる化合物です。2つの酢酸分子が脱水縮合した構造を持ち、純粋な酢酸（氷酢酸）とは明確に区別される必要があります。純酢酸はほぼ100%の酢酸を指し、水分の含有率が低い点が特徴です。一方、無水酢酸は化学的性質が異なり、特有の反応性を示します。

物理的性質と化学的性質

無水酢酸は、無色で強い酸味と刺激臭を有する液体です。その蒸気には催涙性があり、皮膚に触れると水疱や炎症を引き起こすため、取り扱いには細心の注意が必要です。

エタノールなどの有機溶媒によく溶解しますが、これらの溶媒と反応して酢酸エチルなどの新たな化合物を生成することもあります。水にもわずかに溶解しますが、ゆっくりと反応して酢酸に変化します。この反応は酸性条件下で促進されます。また、強塩基と反応させると酢酸塩を生じます。

製造方法

工業的には、ケテンと酢酸を反応させることで無水酢酸が製造されます。その他、無水塩化アルミニウム触媒を用いた酢酸とホスゲンの反応、または塩化アセチルと酢酸ナトリウムの反応によっても合成可能です。日本の2010年度の生産量は24万トンを超えましたが、その大部分はアセチルセルロースなどの原料として、同一工場内で消費されています。

反応性と用途

無水酢酸は、カルボン酸無水物としての反応性を示します。酸または塩基触媒の存在下で、様々な化合物と反応します。例えば、アルコールと反応して酢酸エステルを、アミンと反応してアセトアミド誘導体を生成します。これらの反応は、医薬品や香料、染料などの合成において重要な役割を果たしています。

無水酢酸の主な用途としては、酢酸セルロース繊維の原料、アスピリンなどの医薬品の製造、香料や染料の合成原料などが挙げられます。

法規制

無水酢酸は、麻薬の製造過程で使用される可能性があるため、日本では改正麻薬及び向精神薬取締法により「特定麻薬向精神薬原料」に指定され、厳しく規制されています。具体的には、モルヒネと反応させてヘロインを合成できるため、その取り扱いは法律で制限されています。アメリカ合衆国でもDEA規則により、使用と販売が制限されています。さらに、引火性が高いことから、危険物第四類第2石油類に指定され、大量貯蔵には危険物取扱者免許が必要です。2016年の毒物及び劇物指定令改正により、無水酢酸は劇物に指定されています。

まとめ

無[水]]酢酸は、様々な工業製品の製造に不可欠な化合物ですが、その高い反応性と麻薬合成への利用可能性から、厳格な法規制の対象となっています。取り扱いには、[[安全データシート]を熟読し、適切な安全対策を講じる必要があります。

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