照屋敏子

照屋敏子：沖縄の海を駆け、事業で時代を拓いた伝説の女性

照屋敏子（1915年 - 1984年）は、沖縄県糸満市出身の女性実業家です。漁業から身を立て、その後、様々な分野で事業を成功させました。彼女の波乱万丈な人生と、沖縄の発展に尽力した生涯を紐解きます。

幼少期から事業家へ

1915年、照屋敏子は糸満市に生まれました。幼い頃から漁村の娘として鍛えられ、9歳にして魚を那覇まで売りに行くなど、生活を支えました。10代の頃には南洋に渡り、その経験が後の事業展開の礎となります。19歳で恩師である照屋林蔚と結婚。夫は後に白団の一員として台湾の国軍を支援しました。

戦後の混乱期を生き抜く

戦後、福岡県で引揚者の援護事業に奔走し、漁業団を結成。「女親分」として恐れられながらも、漁民たちの生活を守りました。しかし、得意としていた沖縄漁法が禁止されたことで漁業団は解散。その後、マライに進出し合弁会社を設立するも、現地の事情により撤退を余儀なくされました。

国際通りで新たな道を拓く

シンガポールから帰国後、那覇の国際通りでワニ革・宝石専門店「クロコデール・ストア」を立ち上げます。審美眼を活かし、ワニ革製品だけでなく、珊瑚や宝石、紅型など沖縄の特産品も扱い、店は繁盛しました。地元銀行からの融資や、従業員の協力も得て、事業は拡大。オリンピックメダルの沖縄地区販売代理店になるなど、多角的な事業展開を行いました。

沖縄への情熱

照屋敏子は、沖縄の独立を強く願っていました。「沖縄の島はあくまで琉球人のもの」と語り、その思いは書籍にもなっています。また、紅型作家の育成にも力を入れ、後進の育成にも貢献しました。

晩年と家族

晩年は、プランクトン研究やマッシュルーム栽培、農水産研究所の設立など、新たな事業に挑戦。「菓子キビ」で科学技術庁長官賞を受賞するなど、その起業家精神は衰えることを知りませんでした。彼女の事業は息子たちに引き継がれ、その遺志は現在も受け継がれています。

参考文献

高木凛『沖縄独立を夢見た伝説の女傑 照屋敏子』小学館、2007年。
沖縄大百科事典刊行事務局 編『沖縄大百科事典』 沖縄タイムス社、1983年。
岡本太郎『沖縄文化論 忘れられた日本』中央公論社、2002年。
火野葦平『赤道祭』新潮社、1951年。


照屋敏子は、沖縄の激動の時代を生き抜き、常に新しいことに挑戦し続けた女性でした。彼女の不屈の精神と沖縄への愛情は、多くの人々に感銘を与え、語り継がれています。

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