熊の湯信号場

熊の湯信号場

熊の湯信号場（くまのゆしんごうじょう）は、北海道亀田郡七飯町字仁山に位置していた、日本国有鉄道（国鉄）函館本線の信号場です。鉄道駅としての営業は行われておらず、列車が行き違うための施設として機能していましたが、現在は廃止されています。事務管理コードは▲140134でした。

七飯駅と大沼駅の間を結ぶ藤城線（下り専用線）が開業したことに伴い、昭和41年（1966年）9月30日にその役目を終えました。

歴史

この信号場の歴史は、周辺の函館本線の線路改良と深く関わっています。

昭和31年（1956年）12月15日、仁山信号場（現在の仁山駅）から軍川駅（現在の大沼駅）にかけての区間では、老朽化が進んでいた峠下トンネルを経由する古い線路から、新しく掘られた新峠下トンネルを通る線路への切り替えが実施されました。これにより、この区間の安全性と輸送力が向上しました。

その後、鉄道による貨物や旅客の輸送量が増加し、既存の線路だけでは運びきれない状況となりました。これに対応するため、旧線と旧トンネルを修繕し、この熊の湯信号場を新たに設置することが決定されました。昭和37年（1962年）7月25日に熊の湯信号場が開設されると同時に、当信号場と大沼駅の間では、旧線を上り列車専用、新線を下り列車専用として使用することで、一時的な複線運行が行われ、輸送容量の増強が図られました。

しかし、函館本線の輸送力をさらに高めるため、七飯駅から軍川駅まで、より勾配を緩やかにした別の線路（藤城支線、現在の藤城線）の建設が進められました。この藤城線が昭和41年（1966年）9月30日に開通すると、下り列車はこの藤城線を経由するようになりました。仁山信号場を経由する元の線路は再び上り下り共用の単線区間に戻されたため、暫定的な複線区間であった当信号場は必要なくなり、藤城線開業と同じ日に廃止されました。

名称の由来

信号場名の「熊の湯」は、その近くにあった「熊の湯温泉」に由来しています。

この地方には、アイヌの人々の間で語り継がれる伝承があります。それは、ある若い漁師がこの地の温泉に浸かっていた一頭の熊と遭遇し、激しい格闘の末に気を失ってしまったという物語です。彼を捜しに来た村人に助け起こされ、熊が浸かっていたという温泉に入ったところ、負った重い傷があっという間に癒え、完全に回復したと伝えられています。この不思議な力を持つ温泉にちなんで、「熊の湯」という名前が付けられ、それが信号場名にも採用されたとされています。

構造

熊の湯信号場は、仁山方面から来る単線区間と、大沼方面へ向かう複線区間が接続する地点に設けられていました。主に、単線区間における列車同士の行き違いを可能にするための設備を備えた信号場でした。

駅員は配置されない無人施設であり、線路の分岐や合流を切り替える操作（分岐器制御）は、隣接する仁山信号場から遠隔で行われていました。

隣の駅

熊の湯信号場が廃止された昭和41年当時の函館本線における隣接駅は以下の通りです。

仁山信号場 - 熊の湯信号場 - （小沼信号場） - 大沼駅

※かっこ内の小沼信号場は、熊の湯信号場と同じくすでに廃止されています。

関連項目

• - 日本の信号場一覧

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