熱田発電所

熱田発電所の歴史と技術的背景

愛知県名古屋市熱田区にかつて存在していた熱田発電所は、1915年に営業を開始し1944年まで稼働していた火力発電所です。この発電所は名古屋市における電力供給の一翼を担っていました。

設立の背景

名古屋市での電力供給は、明治から大正にかけて進展しました。特に1910年に完成した大型水力発電所の長良川発電所が市内の電力需要を満たしていましたが、その結果として水主町火力発電所が補助的な役割に甘んじることとなりました。水主町発電所は老朽化が進んでおり、発電効率が低下していました。このため、より効率的な新しい発電所の設置が必要とされました。

熱田東町に土地を購入し、1914年6月に熱田火力発電所の設置が認可され、1875キロワットの発電能力を持つ設計が進められました。そして1915年9月25日に発電所が完工し、11月19日に正式運転が始まりました。

発電所の発展

発電所は、開設当初から需要増加に対応するための施設拡張が行われました。1917年に新しい4000キロワットの発電機が追加され、その後も3000キロワットの発電機が加わることで、合計出力は1万キロワットに達しました。名古屋電灯は1921年に関西水力電気と合併し、続いて東邦電力と改名されました。こうした合併は、発電所の成長に寄与し続けました。

しかし、熱田発電所だけでは冬季の電力供給に対する需要を賄えず、新たに1925年に名古屋火力発電所が建設されました。この新発電所は35000キロワットの発電能力を持ち、熱田発電所の補完的な役割を担いました。

戦争とその後

太平洋戦争が始まると、熱田発電所は中部地方の電力を管理する国策配電会社に移管されました。この頃には発電能力が著しく低下し、1944年3月には廃止が決定されました。その後、発電所の設備は他の業者に譲渡され、跡地は1957年に東海木材相互市場に譲渡された後解体されました。

設備概要

熱田発電所は、1927年の時点で以下の発電設備を有していました。

• - ボイラー:

- 形式: 水管式
- 台数: 5台（予備1台含む）
- 製造者: バブコック・アンド・ウィルコックス
- 燃料: 石炭（粉炭）

• - タービン発電機:

1. タービン形式: カーチス式、容量: 4020馬力、発電機容量: 3750キロボルトアンペア
2. タービン形式: カーチス式、容量: 5360馬力、発電機容量: 5000キロボルトアンペア
3. タービン形式: パーソンズ式、容量: 4020馬力、発電機容量: 3750キロボルトアンペア

• - 変圧器: 設置せず

また、発電所の設立前には名古屋電灯が製鋼事業のための試験を行い、1916年には大同特殊鋼の前身となる電気製鋼所が設立されました。これにより、発電所は工業発展にも寄与したことが伺えます。

結論

熱田発電所は、名古屋市における初期の火力発電の象徴として重要な役割を果たした施設です。その設立と運営は、地域経済と電力供給システムの発展に影響を及ぼし、歴史的な意義を持つといえるでしょう。

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