燃える地の果てに

『燃える地の果てに』は、逢坂剛が1995年から1998年にかけて『別册文藝春秋』に連載し、1998年に文藝春秋から書籍化された長編ミステリー小説です。本作は、1998年の『このミステリーがすごい! '99年版』で第2位、『週刊文春ミステリーベスト10』で第6位にランクインするなど、高い評価を得ています。

物語は、1966年1月にスペイン南部で発生したパロマレス米軍機墜落事故を題材に、冷戦時代を背景とした諜報戦と、作者のスペインに対する深い嗜好が反映されたギターという要素が巧みに組み合わされています。物語は、1966年に地中海に面したスペインの僻村で起こった米軍機墜落事故と、それから30年後の1996年に、同じ工房で作られたギターを持つ男女が、ギター製作家を訪ねる旅という二つの時間軸で展開します。

あらすじ
1996年、新宿でバーを経営する織部まさる（サンティ）と、イギリスのクラシックギター演奏家ファラオナ・マクニクルは、同じ工房で作られたギターの縁から、スペインの田舎町パロマレスへ向かいます。彼らが訪れるパロマレスは、30年前の1966年にアメリカ空軍の爆撃機が空中給油機と接触し、墜落事故を起こした場所でした。

当時、トマト農家で働いていた古城邦秋（ホセリート）は、この事故を目撃します。砂浜に突き刺さった円筒形の物体、それは爆撃機に搭載されていた四基の核爆弾の一つでした。村は治安警備隊によって厳戒態勢が敷かれ、三基の爆弾は地上で発見・回収されましたが、残りの一基は行方不明となります。この事故をきっかけに、村では放射能漏れや行方不明の爆弾に対する不安と不審が広がり始めます。

海上での事故を目撃した漁師の証言から、行方不明の爆弾は海中に沈んだと推測され、アメリカ海軍の協力で海中捜索が開始されます。物語は、過去の事故と現在の旅が交互に描かれながら、それぞれのプロットが複雑に絡み合い、最後に一つの結末へと収束していきます。

主な登場人物

1966年 パロマレス
古城邦秋（ホセリート）：ディエゴが製作したギターを求めてパロマレスにやって来たギタリスト。
ディエゴ・エル・ピエント：村の代用教員を兼ねるギター製作家。
トマス・ロドリゲス：トマト栽培業者。
アルフォンゾ・ゴンザレス：パロマレス村長。
リカルド・ポサダス：村の雨量計測係。
フランク・バージェス：イギリスから住み着いた画家。
ジョゼフィン・バージェス：フランクの妻。
ブレンダ・オハンロン：バージェス家のメイド。

その他

イシドロ・カンポス：治安警備隊ベラ司令部隊長。
アルメンドロ：同治安警備隊伍長。
ロベルト・デル・アモル：UPI通信社バルセロナ特派員。

アメリカ軍
デルマー・ウォルトン：第十六空軍司令官、少将。
スキップ・ラング：同空軍大佐、広報担当将校。
アレクス・マルティネス：同空軍少尉、ウォルトン少将の補佐官。
ノーマン・グレグスン：海軍第六十五機動部隊司令官。

1996年
織部まさる（サンティ）：新宿のバー「エル・ピエント」の経営者。
ファラオナ・マクニクル：イギリスのクラシックギター演奏家。
メアリ・ターナー：ファラオナのマネージャー。
ラファエロ・ベラスケス：クエバス・デル・アルマンソラのギター製作家。
ホセ・カスティージョ：パロマレス村長。

書籍情報
1998年8月：四六上製本、文藝春秋。
2001年11月：（上下巻）下巻解説/木田元、文春文庫。
* 2019年12月：（上下巻）角川文庫。

本作は、過去の事件と現在の旅が複雑に絡み合い、冷戦時代という歴史的背景も相まって、読者を深く引き込む魅力的なミステリー作品です。ギターという美しい楽器を軸に、様々な人々の思惑と運命が交錯する物語は、読後も長く心に残るでしょう。

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