燃料タンク (自動車)

燃料タンク：構造、配置、形状、そして歴史

燃料タンクは、ガソリンや軽油などの燃料を貯蔵する車両の重要なコンポーネントです。本稿では、燃料タンクの構造、材質、車両への配置、形状、そしてオートバイにおける燃料タンクの歴史的変遷について詳細に解説します。

燃料タンクの構造と材質

燃料タンクは、主に鋼板または樹脂で製造されます。鋼板製燃料タンクは、耐食性を高めるためめっき鋼板を使用し、隙間のないシーム溶接によって組み立てられます。溶接部は重ね合わせられ、塗装によって保護されています。一方、樹脂製燃料タンクは、軽量で複雑な形状も低コストで量産できるメリットがあり、広く普及しています。かつては燃料成分の透過が課題でしたが、多層構造の樹脂材料の開発により克服されました。また、燃料蒸気の発生を抑制するブラダータンクも開発されています。

燃料タンクの配置

燃料タンクの配置は、車両の種類や設計によって異なります。フロントエンジンの乗用車では、通常、リアシート近辺の床下に横長に配置され、衝突時の安全性を考慮し、エンジンの排熱の影響を受けにくい場所が選ばれます。リアエンジン車やミッドシップエンジン車では、車両前方に配置されることが一般的です。近年増加しているセンタータンクレイアウトでは、前席床下に配置されます。トラックでは、ホイールベース内のラダーフレーム外側やフレーム内側に配置されることが多く、サブタンクを追加することもあります。SUVや軽トラックでは、リアオーバーハングへの配置も一般的です。

燃料タンクの形状

燃料タンクの形状は、車両の種類、駆動方式、燃料容量などによって異なります。FF車では、プロペラシャフトがないため、扁平な形状のタンクが用いられることが多い一方、4WD車ではプロペラシャフトを避けるため、下面に凹みのある「鞍型タンク」が使用されます。FRベースの4WD車や軽自動車では、駆動方式による形状への影響は少ないです。トラックの燃料タンクは、ドラム缶のような形状であることが多く「ドラムタンク」と呼ばれています。

燃料タンク内部の構造と機能

燃料タンク内部には、燃料供給、燃料管理のための様々な部品が組み込まれています。モーター駆動の燃料ポンプは、フィルターを通して燃料を供給します。燃料計はフロートを用いて燃料残量を測定し、メーターに表示します。フューエルベーパーバルブは、燃料蒸気による圧力上昇を解放します。バッフルプレートは、車両の動きの影響による燃料の偏りを抑制します。

インレットパイプとブリーザーチューブ

インレットパイプは、給油口から燃料タンクへ燃料を導入するパイプです。ブリーザーチューブは、給油時にタンク内の空気を排出するための空気抜き経路として機能します。アメリカでは、ガソリン蒸気の蒸散を防ぐ機構が設けられています。

オートバイの燃料タンク：歴史と進化

20世紀のオートバイでは、キャブレターと重力による燃料供給が一般的でした。そのため、燃料タンクはキャブレターよりも高い位置、多くの場合エンジンの直上に配置され、タンクキャップは連通構造となっていました。転倒時の燃料漏れを防ぐため、手動バルブが備えられた車種もありました。燃料計が装備されていない車種も多く、燃料コックによる残量管理が一般的でした。

2000年代以降は、燃料噴射装置と燃料ポンプの普及により、タンクの配置に自由度が増し、重心位置の近くやエンジン下部に配置されるようになりました。燃料コックは廃止され、燃料計が標準装備となりました。スクーターでは、低圧ポンプによる燃料供給で、燃料タンクを低い位置に配置する設計も存在しました。

まとめ

燃料タンクは、車両の安全と性能に不可欠な部品であり、その構造、材質、配置、形状は、車両の種類や設計思想、そして時代とともに進化を遂げてきました。本稿で解説した内容は、燃料タンクの理解を深める一助となることを願っています。

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