燐灰ウラン石

燐灰ウラン石：ウランの主要鉱石鉱物

燐灰ウラン石(Autunite)は、リン酸塩鉱物の一種であり、ウラン鉱石として重要な鉱物です。化学組成式はCa(UO₂)²(PO₄)²・10～12H₂Oで表され、正方晶系に属します。特徴的な黄緑色の蛍光を示し、紫外線照射によってその蛍光が確認できます。

その形状は、薄い板状や鱗片状であることが多く、燐重土ウラン石、燐銅ウラン石などの類似鉱物と同様に、「ウラン雲母」という名称でも知られています。これらのウラン雲母と呼ばれる鉱物グループは、結晶構造や化学組成が似通っていることから、まとめて呼ばれています。

地質学的な産状としては、ウラン鉱床において二次鉱物として生成されるか、ペグマタイトと呼ばれる火成岩中に見られることが一般的です。ペグマタイトは、マグマがゆっくりと冷えて固まる過程で、比較的大きな結晶を含む特殊な火成岩です。

日本では、岡山県と鳥取県の県境付近にある人形峠鉱山が、燐灰ウラン石の産地として知られています。人形峠鉱山は、かつてウラン鉱石の採掘が行われていた歴史があり、現在も鉱物愛好家の間で知られる場所となっています。

燐灰ウラン石グループ：多様な化学組成

燐灰ウラン石は、様々な金属イオンを含む類似の鉱物を含むグループを形成しており、これらは化学組成の違いにより区別されます。主な構成要素であるウラニルイオン(UO₂)とリン酸イオン(PO₄)に加え、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)といった金属イオンが、それぞれの鉱物の化学式に含まれています。

主な燐灰ウラン石グループの鉱物を以下に示します。

燐灰ウラン石 (Autunite): Ca(UO₂)₂(PO₄)₂・10-12H₂O
ナトリウム燐灰ウラン石 (Sodium Autunite): Na₂(UO₂)₂(PO₄)₂・8H₂O
燐重土ウラン石 (Uranocircite): Ba(UO₂)₂(PO₄)₂・10-12H₂O
燐銅ウラン石 (Torbernite): Cu(UO₂)₂(PO₄)₂・10-12H₂O
サレー石 (Saléeite): Mg(UO₂)₂(PO₄)₂・10H₂O
燐アルミウラン石 (Sabugalite): HAl(UO₂)₄(PO₄)₄・16H₂O
フリッツシャイト (Fritzscheite): Mn(UO₂)₂(PO₄,VO₄)₂・10H₂O

これらの鉱物では、リン酸イオン(PO₄)の一部が砒酸イオン(AsO₄)で置換されたものも存在します。砒酸イオンを含むグループの鉱物には、以下のようなものがあります。

ウラノスピナイト (Uranospinite): Ca(UO₂)₂(AsO₄)₂・10H₂O
ハインリッヒ石 (Heinrichite): Ba(UO₂)₂(AsO₄)₂・10-12H₂O
砒銅ウラン石 (Zeunerite): Cu(UO₂)₂(AsO₄)₂・10-16H₂O
カーラライト (Kahlerite): Fe(UO₂)₂(AsO₄)₂・12H₂O
ノヴァチェキ石 (Nováčekite): Mg(UO₂)₂(AsO₄)₂・12H₂O
トロゲライト (Trogerite): (UO₂)₃(AsO₄)₂・12H₂O

これらの鉱物は、ウラン鉱床の生成や進化を理解する上で重要な役割を果たしており、地質学的研究対象として注目されています。また、ウラン資源開発においても、重要な指標鉱物となっています。 蛍光性を持つ燐灰ウラン石は、特にコレクターにも人気があります。

参考文献

沼野忠之　『岡山の鉱物』　日本文教出版〈岡山文庫〉、1980年
豊遙秋・青木正博　『検索入門 鉱物・岩石』　保育社、1996年
松原聰　『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』　学習研究社、2003年
松原聰・宮脇律郎　『国立科学博物館叢書5 日本産鉱物型録』　東海大学出版会、2006年
国立天文台編　『理科年表 平成19年』　丸善、2006年

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