父子鷹

父子鷹（おやこだか）

概要

『父子鷹』は、子母澤寛による時代小説で、1955年から1956年にかけて読売新聞夕刊に連載されました。主人公は、勝海舟の父として知られる勝小吉。型破りな無頼漢でありながら、庶民から愛された小吉の生き様を中心に、江戸時代後期の旗[[本]]や市井の人々の生活が生き生きと描かれています。この作品は、親子の絆や、困難に立ち向かう人間の強さを描いた名作として知られています。

この小説では、小吉は、酒や女、博打には全く興味を示さないものの、その剣術の腕は確かで、義理人情に厚く、庶民から「江戸っ子が惚れぼれするお侍」として絶大な人気を誇ります。また、この作品に由来して、ともに優れた能力を持つ父子のことを「父子鷹」もしくは「親子鷹」と呼ぶようになりました。

あらすじ

物語は、小吉が旗[[本]]の男谷家の三男として生まれ、後に勝家に養子に出されるところから始まります。若い頃、養祖母との折り合いが悪く、家を飛び出した小吉は、放浪の末に連れ戻されます。実父の尽力で役職を得る機会が訪れますが、賄賂を拒否したことで、小普請という無役の身に甘んじることになります。その後、兄が小吉のために奔走しますが、小吉は世話役を殺害してしまい、座敷牢に監禁されてしまいます。

この頃、小吉の子である麟太郎（後の勝海舟）が誕生します。麟太郎は、やがて阿茶の局の尽力で、一橋家の嫡男の遊び相手として江戸城に召し出されます。一方、小吉は、本所・深川界隈で市井の様々な騒動に巻き込まれながらも、道具市で刀剣の古物商を始め、徐々に勝家の借金を返済していきます。麟太郎は、一橋家嫡男の急死により城から戻りますが、その後、剣術や蘭学の修行に励むことになります。

主な登場人物

勝小吉：本作の主人公。勝海舟の父。型破りな性格で、剣術に長けている。
男谷平蔵：小吉の実父。小吉の境遇に同情的。
勝甚三郎：小吉の養父。
養祖母 (おばば) 様：甚三郎の母。小吉を嫌っている。
お信：小吉の妻で、麟太郎の母。勝家の跡取り娘と思われる。
男谷検校 (けんぎょう)：平蔵の父。一代で財を成した。
阿茶の局：平蔵の妹。大奥で権勢をふるい、小吉や麟太郎を助ける。
男谷彦四郎：平蔵の長男。小吉の兄。儒学者で頑固。
勝麟太郎：小吉の子。後の勝海舟。
利平次：男谷平蔵の用人。平蔵の死後、小吉に世話になる。
男谷精一郎（男谷信友）：彦四郎の子（婿養子）。剣術の達人。
金子上 (かねこかみ) 次助：小吉が御家人に取り立てられた際、同役になるはずだった人物。小吉に殺される。
岡野孫一郎：小吉が住む借家の大家。酒色に溺れる。
団野真帆齋：精一郎、小吉の剣術の師。
栄助：本所の道具市の世話役。小吉に商売を教える。
永井青崖：麟太郎が師事した蘭学者。
島田虎之助：麟太郎の剣術の師。
都甲市郎左衛門：蘭学者で、麟太郎の将来を嘱望する。
渡辺兵庫：小吉の敵役。
弁治：小吉の幼馴染で巾着切。後に仕立て屋となる。
水心子（すいしんし）秀世：刀鍛冶。小吉の依頼で刀剣講に刀を出品する。
篠田玄斎：外科医。麟太郎の睾丸の怪我を治療する。
伝次郎：町火消頭取。麟太郎を噛んだ犬の飼い主。
松五郎：町火消頭。小吉と親しい。

映画

1956年に東映によって映画化されました。市川右太衛門が勝小吉を、北大路欣也が勝麟太郎を演じ、北大路欣也のデビュー作としても知られています。映画版は、明るい結末で、東映時代劇のプリンス誕生を祝うにふさわしい作品となりました。

テレビドラマ

過去に4度テレビドラマ化されています。また、本作の原作者である子母澤寛の作品を原作としたNHK大河ドラマ『勝海舟』も制作されています。

その他

『父子鷹』は、勝小吉という型破りな人物を通して、江戸時代後期の庶民の生活や文化、そして親子の絆を描いた作品です。小説だけでなく、映画やテレビドラマとしても広く親しまれています。

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