爽文市

爽文市について

爽文市（そうぶんし）は、1945年3月に重慶国民政府が策定した「台湾接管計画綱要地方政制」の中で定められた、台湾における行政区画の一つです。この計画において、爽文市は日本統治時代の嘉義市に相当する地域を指していました。

歴史的背景

爽文市の名称は、清朝時代に遡る歴史的な出来事に深く関連しています。清朝初期、この地は「諸羅（しょら）」と呼ばれていました。しかし、1787年4月から9月にかけて、林爽文（りんそうぶん）による大規模な反乱が発生し、諸羅県城は5ヶ月にも及ぶ包囲を受けました。結果として、諸羅の住民は林爽文の攻撃を耐え抜き、清朝軍が反乱を鎮圧する上で重要な役割を果たしました。

この反乱鎮圧の功績を称え、乾隆帝（けんりゅうてい）は住民の義挙を嘉し、「諸羅」を「嘉義（かぎ）」と改名しました。この「嘉義」という地名は、その後の日本統治時代にもそのまま使用されることになります。

爽文市への改称

1945年、国民政府は台湾を接収する計画の一環として、嘉義の地名を「爽文市」と改称することを決定しました。これは、林爽文の反乱を記念し、その功績を称えるためでした。

しかし、当時台湾での軍政責任者であった陳儀（ちんぎ）は、「台湾接管計画綱要地方政制」の実施が現状にそぐわないと判断し、一部の改編措置を見送りました。この結果、爽文市への改名も先送りにされ、実際に「爽文市」という名称が使用されることはありませんでした。

計画の終焉

1950年、国共内戦に敗れた国民政府が台湾に移転した際、「台湾接管計画綱要地方政制」は廃止されました。これにより、爽文市への改称の法的根拠も失われ、爽文市という名称は計画のまま消滅しました。

爽文市は、その歴史的背景から興味深い名前ではありますが、実際に使用されることはなく、幻の行政区画として歴史の中に埋もれることとなりました。

まとめ

爽文市は、嘉義市の歴史と深く結びついた名前であり、林爽文の反乱という歴史的な出来事を背景に持ちます。しかし、政治的な状況や判断により、その名称が実際に使用されることはありませんでした。この事実は、歴史における計画と現実のギャップを物語る一例と言えるでしょう。


参考文献

施亜軒 『台湾的行政区変遷』（2003年 台北 遠足文化出版社）

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