片倉もとこ

片倉もとこ：イスラームと沙漠文化を愛した文化人類学者

片倉もとこ（1937年10月17日 - 2013年2月23日）は、日本の文化人類学者、人文地理学者です。旧姓は新谷。イスラーム世界、特にサウジアラビアの遊牧民社会に関する研究で知られています。国際日本文化研究センター所長も務めました。

生涯

神奈川県に生まれた片倉もとこは、湘南高校を経て、アメリカのチャタム女子大学に留学。この留学が彼女の人生を大きく変えます。中東からの留学生との交流を通じてイスラーム文化に興味を持つようになったのです。その後、津田塾大学英文学科を卒業。アラビスト外交官の片倉邦雄氏と結婚し、カイロ大学に留学してアラビア語を学びました。

帰国後、中央大学大学院で修士号を取得。コロンビア大学中東研究所客員研究員を経て、東京大学大学院で博士号を取得しました。博士論文は、サウジアラビアの遊牧民社会の人文地理学的研究です。

1978年、津田塾大学教授に就任。その後、国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学教授を歴任しました。2005年には国際日本文化研究センター所長に就任し、2008年に退任。その後は中央大学総合政策学部教授として教鞭をとりました。

2013年2月23日、大腸がんのため75歳で死去。彼女の遺志を継ぎ、沙漠文化の「諒解」に寄与することを目的に、片倉もとこ記念沙漠文化財団が設立されました。

主な受賞歴

片倉もとこの功績は数々の賞に輝いています。

1980年：アジア経済研究所開発途上国研究奨励賞（『アラビア・ノート：アラブの原像を求めて』）
1981年：東京海上各務記念財団第1回優秀著書（文化部門）賞
1983年：第6回石油文化賞
1984年：第3回女性のためのエッソ研究奨励賞
1991年：大同生命地域研究奨励賞（アラブ・イスラーム研究の新境地開拓の業績に対して）

人物

国際日本文化研究センター所長は、梅原猛、河合隼雄、山折哲雄と生え抜きが続いていましたが、片倉もとこは関東からの初の女性所長でした。夫の邦雄氏の米国駐在時には、小和田恆氏（皇后雅子の父）とその家族と交流があり、皇后雅子とも知り合いでした。

研究内容

片倉もとこの研究は、サウジアラビアのワーディ・ファーティマ地域における長期にわたるフィールド調査に基づいています。彼女は、この地域の遊牧民社会の生活、文化、社会構造を詳細に調査し、その変遷を記録しました。また、イスラーム文化における「移動」の意義に着目し、「移動文化」という独自の概念を提唱しました。著書を通じて、イスラーム世界の多様性と寛容さを伝えようと努めました。

著書

片倉もとこは、数多くの著書を執筆し、その研究成果を広く社会に伝えました。

『アラビア・ノート：アラブの原像を求めて』（NHKブックス／ちくま学芸文庫）
『沙漠へ、のびやかに』（筑摩書房）
『イスラムの日常世界』（岩波新書）
『「移動文化考」 イスラームの世界をたずねて 』（日本経済新聞社／岩波書店）
『イスラームの世界観　「移動文化」を考える』 （岩波現代文庫）
『ゆとろぎ イスラームのゆたかな時間』（岩波書店）

これらの著書は、一般読者にもわかりやすく、イスラーム文化への理解を深める上で貴重な資料となっています。

関連サイト

一般財団法人 片倉もとこ記念沙漠文化財団
* 片倉もとこ - researchmap

片倉もとこの研究は、文化人類学、人文地理学の分野に大きな足跡を残しました。彼女の業績は、今後も多くの研究者や学生に影響を与え続けるでしょう。

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