片埜神社

片埜神社：大坂城鬼門の鎮護と、歴史の重みを感じさせる神社

大阪府枚方市牧野阪に鎮座する片埜神社（かたのじんじゃ）は、古くから地域の信仰を集める神社です。式内社であり、かつては郷社として崇敬を集めてきました。その歴史は古く、社伝によれば垂仁天皇の時代、出雲の豪族・野見宿禰が当地を拝領し、出雲の祖神である建速須佐之男大神を祀ったことに始まると伝えられています。

欽明天皇の時代には「片埜神社」の社号を賜り、交野郡の産土社となりました。平安時代中期には、菅原道真が天神として祀られるようになり、当社でも配祀されるようになりました。このことから、建速須佐之男大神と菅原道真を主祭神として祀っていることが、この神社の大きな特徴となっています。

平安時代後期には「一宮」と称され、交野郡における重要な神社としての地位を確立していました。しかし、鎌倉時代の元弘の乱や戦国時代の戦乱で荒廃した時期もありました。

転機となったのは、天正11年（1583年）羽柴秀吉が大坂城を築城した時です。片埜神社は大坂城の鬼門の方角に位置していたため、鬼門鎮護の社として復興されました。大坂城天守の北東の石垣には鬼面が刻まれ、神社と対面させるなど、特別な配慮がなされたと伝えられています。

慶長7年（1602年）には、豊臣秀頼によって本殿や拝殿などが再建されました。この際、片埜神社だけでなく、交野郡の二宮、三宮も大坂城の鬼門鎮護の社として修復されたと言われています。

江戸時代には牛頭天王を祀る神社となり、「一宮牛頭天王」を正式名称としていましたが、明治時代に近隣の神社を合祀した際に「片埜神社」に復し、郷社に列せられました。合祀された神社は、粟倉神社、百済王神社、御狩神社、複数の産土神社、八幡神社、道祖神社、式内・久須須美神社など複数にのぼります。

大坂城鬼門除けの神社としての役割から、現在でも方除・厄除けの神として信仰されています。鬼は片埜神社の象徴、守り神とされ、絵馬や御朱印には鬼面が描かれ、節分の豆まきでは「鬼は内」と唱える風習があります。

境内には、慶長7年再建の本殿（重要文化財）や、大阪府指定有形文化財である東門、南門、石造灯籠などが現存し、歴史を感じさせます。また、境内社として稲荷社や依姫社があり、境外社には朝原神社や瘡神社があります。

特に瘡神社は、菅原道真の馬が病気で亡くなった場所に祀られたと伝わる神社で、皮膚病平癒に霊験があるとされています。

興味深いのは、境内北に隣接する牧野公園にある「阿弖流為（アテルイ）・モレの塚」の伝承です。古くから大物武将の首塚との伝承があり、近年石碑も建立されました。片埜神社では、アテルイの御守を授与しており、歴史と伝承が融合した独特の信仰が感じられます。

片埜神社は、歴史、神々、伝承が複雑に絡み合い、訪れる者に深い印象を残す、魅力的な神社と言えるでしょう。その歴史的価値と信仰の深さから、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。

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