片岡一則

片岡一則

片岡一則（かたおか かずのり、1950年11月27日 - ）は、日本の医用生体工学、生体材料学者であり、工学博士（東京大学）の学位を有しています。東京大学名誉教授であり、公益財団法人川崎市産業振興財団副理事長、ナノ医療イノベーションセンターセンター長を務めています。東京都中央区出身です。

研究分野と業績

片岡博士は、ナノテクノロジーを駆使した薬剤デリバリーシステム（DDS）の開発や、高分子ナノテクノロジーを用いた再生医療研究の第一人者として知られています。特に、ナノマシン技術を応用したDDSは、がんなどの難治性疾患の治療に革新をもたらす可能性を秘めています。2006年には、東京大学本郷キャンパスに「ナノバイオ・インテグレーション研究拠点」を設立し、リーダーとして工学と医学の融合研究を推進しました。その業績は国際的に高く評価され、フンボルト賞や江崎玲於奈賞をはじめ、数々の科学賞を受賞しています。

略歴

片岡博士は、1970年に東京教育大学附属高等学校（現・筑波大学附属高等学校）を卒業後、1974年に東京大学工学部合成化学科を卒業しました。1979年には東京大学大学院工学系研究科合成化学専攻博士課程を修了しています。

その後、東京女子医科大学医用工学研究施設で助手、講師、助教授を歴任し、1989年には東京理科大学基礎工学部助教授に就任しました。1992年と1996年にはパリ大学（フランス）の客員教授を務め、国際的な研究活動を展開しています。1994年には東京理科大学基礎工学部教授に昇進し、1998年には東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻教授に着任しました。

2001年から2004年までは独立行政法人物質・材料研究機構生体材料研究センターディレクターを兼任し、2004年からは東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター教授も兼任しました。2007年には東北大学、2008年にはミュンヘン大学（ドイツ）、2010年には浙江大学（中国）で客員教授を務めています。2012年には四川大学（中国）の名誉教授に就任しました。

2014年には日本学術会議会員に選出され、2015年には公益財団法人川崎市産業振興財団副理事長に就任しました。同年、同財団のナノ医療イノベーションセンターセンター長にも就任し、現在に至ります。さらに、2015年からはノースカロライナ大学チャペルヒル校（米国）薬学部教授（非常勤）も務めています。2016年には東京大学名誉教授となり、東京大学政策ビジョン研究センター特任教授、成均館大学（韓国）Biomedical Institute for Convergence at SKKUセンター教授（兼任）にも就任しました。2018年にはハルビン工科大学（中国）客座教授、2019年から2021年までは東京大学未来ビジョン研究センター特任教授を務めました。

受賞・顕彰

片岡博士は、その卓越した研究業績により、国内外で数多くの賞を受賞しています。主なものとして、日本バイオマテリアル学会賞（1993年）、高分子学会賞（2000年）、文部科学大臣表彰科学技術賞（2010年）、フンボルト賞（2012年）、江崎玲於奈賞（2012年）などがあります。また、高松宮妃癌研究基金学術賞（2017年）、コーセーコスメトロジー奨励賞（2020年）なども受賞しています。さらに、2014年以降は、クラリベイト・アナリティクスの「Highly Cited Researchers」に複数回選出されており、世界で最も影響力のある研究者の一人として認められています。2023年には、Biomaterials Global Impact賞、向井賞、クラリベイト引用栄誉賞を受賞し、2024年には川崎市市政功労賞、川崎市社会功労賞を受賞しています。

アカデミー会員・学会フェロー

片岡博士は、数々の学会で要職を務めています。米国生物医学工学院（AIMBE）フェロー（1999年）、日本バイオマテリアル学会会長（2004年～2006年）、遺伝子・デリバリー研究会会長（2004年～2010年）、International Union of Society for Biomaterials Science and Engineering (IUSBSE)フェロー（2004年）、高分子学会会長（2010年～2012年）、米国Controlled Release Societyフェロー（2010年）、日本工学アカデミー会員（2011年）などを務めています。また、米国Controlled Release Society会長（2012年～2013年）、全米技術アカデミー（NAE）外国人会員（2017年）、米国発明家アカデミー（NAI）フェロー（2017年）、日本バイオマテリアル学会名誉会員（2017年）、高分子学会名誉会員（2019年）、日本DDS学会名誉理事（2019年）にも選出されています。

光応答性ナノマシン

2014年4月には、片岡博士の研究グループが、光に反応して目的の遺伝子をがん細胞に届ける「光応答性ナノマシン」の構築に成功したと発表しました。このナノマシンは、従来の遺伝子導入技術と比較して、高い選択性と安全性を誇り、全身投与が可能であるという特徴があります。この技術により、がんだけでなく動脈硬化など、これまで治療が困難であった病気に対する遺伝子治療の可能性が広がることが期待されています。

その他

片岡博士は、教育者としても多くの学生を育成しており、日本の科学技術の発展に大きく貢献しています。その研究成果は、国内外の学会や論文で広く発表されており、その知見は、医学や工学分野の発展に不可欠なものとなっています。

外部リンク

ナノ医療イノベーションセンター：センター長メッセージ
片岡・喜納ラボ：メッセージ

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