片島港

片島 港（かたしま みなと）

片島港は、1910年（明治43年）4月9日に宮崎県で生を受け、1996年（平成8年）8月1日に86歳で亡くなるまで、日本の労働運動、政治、そして実業界において多岐にわたる活動を展開した人物です。そのキャリアは、逓信官吏としての勤務に始まり、労働組合での指導者、そして衆議院議員として長年にわたり国政の舞台で活躍しました。

彼の経歴は、1934年（昭和9年）に逓信官吏練習所の第二部行政科を卒業したことから始まります。卒業後、彼は逓信省の官吏となり、郵便局の書記補、逓信属といった職を経て、総務局の養成係長や逓信事務官を務めました。この官吏としての実務経験は、その後の彼の活動基盤となったと言えるでしょう。

逓信省での経験を通じて、片島は労働運動に深く関わっていきます。特に戦後の混乱期から復興期にかけて、彼は労働組合の組織化や運営において指導的な役割を担いました。全逓信従業員組合（全逓、後の日本郵政公社労働組合）では中央執行委員として、組合員の地位向上や労働環境の改善に向けて活動しました。また、全国労働組合会議の組織部長や、官業労働研究所の理事といった役職も務め、労働界における重要な人物として認知されるようになりました。

労働運動での実績を背景に、片島は政治家を志します。1947年（昭和22年）4月に実施された第23回衆議院議員総選挙に、日本社会党の公認候補として宮崎県第1区から出馬し、初の当選を果たしました。しかし、続く第24回および第25回の総選挙では続けて議席を失うという挫折も味わいます。こうした経験を経た後、1953年（昭和28年）4月の第26回総選挙で再び当選を果たし、その後は第30回総選挙まで連続して当選を重ね、衆議院議員として通算6期にわたり国政に携わりました。特に、故郷である宮崎県の発展にも深く関心を寄せ、地域を代表する政治家として活動しました。

国会議員として、片島は多岐にわたる分野で重要な役割を果たしました。衆議院では逓信委員長として、国の通信事業や郵政行政に関する政策決定に影響力を持ちました。また、畑地農業改良促進対策審議会や国土総合開発審議会の委員を務めるなど、農業政策や国土開発といった幅広い分野の審議に関与しました。所属政党である日本社会党内でも要職を歴任し、選挙対策副委員長として党の選挙戦略立案に携わったほか、九州開発特別委員会副委員長、軍事基地対策委員長、そして代議士会副会長を務めるなど、党の政策決定や運営において中心的な役割を担いました。長年にわたり活躍しましたが、第31回総選挙では次点で落選し、政界での活動に一区切りをつけました。

議員引退後、片島は実業家として新たな道を歩みます。日本通信サービスの社長や通信建築研究所の社長を務めるなど、これまでのキャリアで培った知識と経験を活かし、通信関連分野の企業経営に携わりました。

公共への長年の貢献が認められ、1980年（昭和55年）春には勲二等瑞宝章を受章しました。さらに、1981年（昭和56年）3月28日には、寄付による功績が顕著であるとして紺綬褒章と賞杯を賜るなど、社会貢献活動にも熱心でした。

片島港は、1996年（平成8年）8月1日に、東京都杉並区の東京衛生病院にて、脳梗塞のため安らかに息を引き取りました。享年86歳でした。その多年にわたる功績に対し、政府は没日付をもって正四位を追贈し、その栄誉を称えました。

労働問題に関する著作も残しており、1948年には『社会党員の告白』を労働問題研究会から出版しています。逓信官吏、労働運動家、政治家、実業家と、時代の変遷とともに様々な顔を持った片島港は、戦後日本の社会の発展に寄与した人物として記憶されています。

（出典：衆議院・参議院『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』、日外アソシエーツ『現代物故者事典 1994～1996』他）

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