牛丸康夫

プロクル牛丸康夫（うしまる やすお、1936年 - 1986年）は、日本正教会に深く貢献した長司祭です。プロクルは洗礼名であり、彼の生涯は正教会の信仰と密接に結びついていました。福島県白河市で正教徒の家庭に生まれた彼は、幼い頃から教会に親しみ、信仰を深めました。

生涯と業績

牛丸康夫は、ニコライ堂境内にある正教神学校を卒業後、さらに聖ウラジミール神学大学で学び、神学の知識を深めました。1963年には司祭に叙聖され、神田ハリストス正教会を皮切りに、神戸、大阪の各ハリストス正教会で司祭を務めました。その間、西日本主教教区宗務局長や府主教庁宗務総局役員、正教神学院教授、京都産業大学講師など、多くの要職を歴任し、教会の発展と人材育成に尽力しました。

彼は、日本正教会の歴史に関する研究に情熱を注ぎ、数多くの著述を発表しました。特に、ロシアの文豪ドストエフスキーと正教の関係についての考察は、学術的にも高く評価されています。また、ロシア正教会史をまとめた著述や、ゲオルギイ・フロロフスキイからの翻訳など、幅広い分野でその才能を発揮しました。これらの業績は、遺稿集『曙光　長司祭牛丸康夫遺稿集』にまとめられ、後世の研究者たちに貴重な資料を提供しています。

牛丸康夫は、長縄光男や御子柴道夫といった、ロシア宗教思想や正教の研究者たちとも交流がありました。長縄光男とは史料提供を通じて交流し、御子柴道夫とは学生時代に面識がありました。彼らは牛丸の業績を高く評価し、遺稿集に追悼文を寄せています。このことからも、彼の学識の深さと人柄が伺えます。

1986年、50歳という若さで大阪で永眠しましたが、彼の残した足跡は、今もなお日本正教会に大きな影響を与えています。彼の研究は、正教会の歴史を理解する上で欠かせないものであり、後世の研究者たちによって受け継がれています。

主な著書

牛丸康夫は、数多くの著作を残しました。その中から主なものを以下に紹介します。

正教文化総合誌『曙光』（1966年神戸で創刊、1986年7月号で終刊、88号）
『神戸正教会史』（1968年『曙光』九月号掲載）
『明治文化とニコライ』（教文館、1969年）
『日本正教史』（正教会、1978年）
『大阪正教会百年史譚』（大阪、1978年）
『日本正教と明治文化』（ナウカ「窓」九月号、1978年。英訳あり（1980年））
『パウエル中井木菟麻呂小伝』（大阪、1979年）
『日本正教会一九七〇年 - 一九八〇年』（正教会、1980年）
『徳島　聖堂建設記念誌』（徳島、1980年）
『神のみ旨に生きた激動時代の僕たち』（正教会、1985年）

これらの著書は、日本正教会の歴史や文化を理解する上で貴重な資料であり、多くの人々に読まれています。

参考文献

* 『曙光　長司祭牛丸康夫遺稿集』572頁・573頁（1995年、牛丸忍発行、及川信編集）

この遺稿集は、牛丸康夫の研究や生涯を深く知る上で、非常に重要な文献です。

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