牟俸

牟俸（ぼう ほう、1420年 - 1483年）は、明代中期に活躍した官僚であり、その字は公爵と称されました。彼の出身は重慶府巴県です。

1451年（景泰2年）に、牟俸は進士の試験に合格し、その才能を認められました。彼は御史に任じられ、雲南地方を巡察する任務を担いました。この際、南寧伯毛勝が金歯に駐屯していましたが、牟俸は彼の不法行為を詳細に記録し、その罪を糾弾しました。

1457年（天順元年）には、福建僉事として新たな役職に就き、赴任しました。成化年間の初めには、福建副使に昇進し、その後、江西按察使へと転任しました。江西での彼の統治は、厳格かつ強硬なものであったと記録されています。

1471年（成化7年）7月には、中央に召還され、太僕寺卿に任命されました。翌1472年（成化8年）には、左僉都御史となり、山東地方の巡撫を任されました。山東での彼の働きは、特に飢饉対策において顕著でした。

1473年（成化9年）、山東地方が不作に見舞われた際、牟俸は済南府の官倉を開放し、備蓄されていた穀物を安価で民に販売することを朝廷に請願しました。さらに飢饉が深刻化すると、牟俸の訴えが聞き入れられ、臨清州の官倉に保管されていた10万石もの粟が移送され、飢餓に苦しむ人々への救援物資として使用されました。また、東昌府や済寧州の官倉も開放し、10万石以上の粟を軍士の食料として提供しました。

1474年（成化10年）にも、再び山東地方で飢饉が発生すると、牟俸は官倉を開放し、穀物を民に貸し付けるよう進言しました。これらの措置は、飢餓に苦しむ民衆を救済するための彼の強い決意を示すものでした。

1476年（成化12年）、牟俸は右副都御史に昇進し、南畿地方の巡撫に任命されました。しかし、彼の官僚としてのキャリアは、1478年（成化14年）に転機を迎えます。牟俸が議事のために北京に上京した際、陳鉞によって誣告され、投獄されてしまいました。

1479年（成化15年）には、一兵士として鎮遠衛に流刑に処せられました。そして1483年（成化19年）9月、流刑先で生涯を閉じました。享年は64歳でした。

牟俸の生涯は、官僚としての成功と、不運な転落が交錯するものでした。しかし、山東巡撫時代に見せた、民を思うその行動は、後世に語り継がれるべき功績と言えるでしょう。

参考文献
* 『明史』巻159 列伝第47

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