新宮城

新宮城の概要

新宮城は、和歌山県新宮市に位置する、熊野川沿いの丹鶴山に築かれた平山城です。別名として丹鶴城、また沖見城とも呼ばれていました。この城跡は「新宮城跡附水野家墓所」として、国の史跡に指定されています。丹鶴城の名は、源為義と熊野別当の娘の間に生まれた丹鶴姫に由来します。堀内氏が築いた「堀内新宮城」の跡は、全龍寺の境内に残り、その西側には水堀の一部が確認できます。

現在の新宮城は、浅野忠吉によって築城され、一国一城令による廃城後、再度築城されました。この再建された城には、大小の天守や二ノ丸がありました。水野氏の時代には松ノ丸が加えられ、現在見られる石垣は、切込み接ぎと打込み接ぎの両方が用いられています。昭和初期には、本丸周辺が民有地となり、旅館と本丸を結ぶケーブルカーが運行されていましたが、後に廃線となりました。現在、城跡は丹鶴城公園として整備され、「和歌山県朝日夕陽百選」にも選定されています。また、地下には紀勢本線のトンネルが通っています。

歴史

新宮城の地は、もともと田鶴原と呼ばれ、平安時代末期には熊野別当の別邸があったとされています。丹鶴姫は、この地の熊野別当の娘で、後に熊野別当の行範に嫁ぎました。行範の死後、尼となり、夫の菩提を弔うために東仙寺を建立しました。

安土桃山時代

堀内氏の時代には、堀内安房守氏善が平城である「堀内新宮城」を築きました。しかし、堀内氏は関ヶ原の戦いで西軍についたため、東軍の桑山一晴によって攻略されました。この堀内氏の居城跡は、現在の全龍寺の場所にあります。

浅野氏

1601年、浅野忠吉が築城を開始し、丹鶴山にあった東仙寺と香林寺を移転させました。翌年には城が完成しました。

江戸時代

1615年、一国一城令により一旦廃城となりましたが、1618年に再築が認められ、浅野忠吉が再築に着手しました。しかし、完成前に浅野氏は転封し、水野重仲が城主となりました。水野氏は浅野氏の築城を引き継ぎ、1667年に現在の近世城郭が完成しました。この間、地震による被害や、宝永地震による石垣の被害などもありましたが、その都度修復が行われました。

明治時代

明治維新後、新宮藩の藩庁が置かれましたが、廃藩置県により新宮県庁が設置されました。その後、和歌山県に合併され、1873年の廃城令により、天守などの建物は払い下げられ、取り壊されました。二ノ丸跡には天理教南海大教会が開設され、後に正明保育園となりました。

大正・昭和時代

大正時代には堀の埋め立てが行われ、昭和時代には旅館「二の丸」が開業し、ケーブルカーが運行されました。しかし、1980年にはケーブルカーは休止し、その後廃線となりました。1980年代には、新宮市が城跡の主要部分を買収し、丹鶴城公園として整備が進められました。

平成時代

2003年には、新宮城跡が国の史跡に指定され、2017年には続日本100名城に選定されました。

構造

新宮城は、熊野川の右岸、丹鶴山に築かれており、正保年間の絵図には、天守台、本丸、出丸、鐘ノ丸、松ノ丸などの構造が描かれています。また、二ノ丸や下屋敷、船着き場も配置されており、上下連郭式の構造となっています。1667年に水野氏によって増築され、東西324メートル、南北198メートル、周囲972メートルの規模となりました。

各部の詳細

本丸: 城の中心で、標高約60メートルの最高所に位置します。北面には枡形虎口が残っています。天守台には3層5階の天守閣があったと推定されています。
出丸: 本丸の北西に位置し、熊野川を見下ろす位置にあります。浅野氏時代には本丸と繋がっていましたが、水野氏時代には切り離されました。
鐘ノ丸: 本丸の南西部に位置し、切込み接ぎ布積みの石垣や桝形虎口の跡が残っています。
松ノ丸: 鐘ノ丸の西側に付属しています。
二ノ丸: 西側の山麓に位置し、水野氏時代には上屋敷として使用されました。花崗岩による算木積みの石垣が残っています。
水ノ手: 熊野川に面した船着き場があり、備長炭を江戸に送る拠点として利用されました。

文学

小説家・詩人の佐藤春夫は、幼少期に新宮城跡によく登っていたと自身の作品に記しています。また、与謝野寛がこの地を訪れた際に詠んだ歌も残されています。

周辺

新宮城周辺には、熊野速玉大社や佐藤春夫記念館、西村記念館などの観光スポットがあります。

新宮城は、その歴史と構造において多くの魅力を持つ城跡です。

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