牡丹江省

牡丹江省（ぼたんこうしょう）は、1932年から1945年まで存在した満洲国において、その地方行政区画として設置されていた省の一つです。現在の中国、黒竜江省の南東部に位置する地域を管轄していました。

設置とその経緯

この省は、満洲国政府によって1937年7月1日に新設されました。当時の行政区分であった浜江省の南部地域を分割・再編する形で誕生しました。設置当初、その管轄下には牡丹江市をはじめ、寧安（ねいあん）、穆棱（ぼくりょう）、東寧（とうねい）、密山（みつざん）、虎林（こりん）といった五つの県が含まれていました。この設置は、満洲国東部国境地帯の行政体制を強化する目的で行われたと考えられます。

管轄区域の変遷

牡丹江省の管轄区域は、設置後もいくつか変更がありました。1939年6月には、新たに綏陽（すいよう）県が設置され、省の管轄区域に加わりました。一方で、密山県と虎林県は、同月に新設された東安省へと移管されることになりました。これにより、牡丹江省の管轄区域は、設置当初から変更され、その範囲や構成が変化しました。

廃止と再編

牡丹江省は、比較的短期間のうちに行政再編の対象となりました。1943年10月1日には、満洲国政府による大規模な地方行政区画の改編に伴い、牡丹江省は独立した省としての地位を失い、新たに設置された東満総省に編入されました。東満総省は、満洲国東部地域を統合的に管轄する広域行政機構であり、牡丹江省の旧区域はその一部となりました。しかし、この東満総省も満洲国崩壊直前の1945年5月28日に解体されることになります。東満総省の解体後、旧牡丹江省の区域は、旧東安省の区域と合併し、東満省として再編されました。この東満省も、満洲国の瓦解とともに消滅しました。

歴代の省長

満洲国の省長は、その省の行政を司る重要な役職でした。牡丹江省においては、複数の人物が省長を務めました。初代省長としては、大島陸太郎（おおしま りくたろう）が1937年7月1日の設置から1938年8月19日までその任にあたりました。その後、渋谷三郎（しぶや さぶろう）が1938年8月19日から1939年12月18日まで務め、三代目にして最後の省長となったのは三谷清（みたに きよし）で、1939年12月18日から省が東満総省に編入される1943年10月1日まで在任しました。これらの人事は、当時の満洲国における日本の影響力を示すものと言えます（なお、これらの情報は特に断りのない限り、『世界諸国の制度・組織・人事 : 1840-2000』を典拠としています）。

現在の位置

牡丹江省がかつて存在した地域は、現在の中華人民共和国黒竜江省の南東部に該当します。省名にもなった牡丹江市を中心とした地域であり、現在も重要な都市として発展しています。満洲国時代の行政区分は現在のものとは異なりますが、地理的にはその位置関係を把握する上で参考になります。

関連事項

満洲国の地方行政制度は複雑であり、度々改編が行われました。牡丹江省の歴史は、その一例と言えます。満洲国の他の行政区画やその変遷については、関連する文献などを参照することでより深く理解することができます。特に、東安省や東満総省、東満省といった、牡丹江省と直接的に関わりのあった行政区分についても併せて知ることで、当時の状況をより立体的に捉えることができるでしょう。

参考文献

* 秦郁彦 編『世界諸国の制度・組織・人事 : 1840-2000』東京大学出版会、2001年。

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